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高校時代から付き合っていた恋人・加地君が自分の知らない女の子と旅先の事故で死んでから、1年半。奈緒子は、ようやく「日常」を取り戻しつつあった。深い悲しみと静かな愛の物語。
流れ星が消えないうちにの作品情報
- タイトル
- 流れ星が消えないうちに
- 著者
- 橋本紡
- 形式
- 小説
- ジャンル
- 青春
恋愛 - 執筆国
- 日本
- 版元
- 新潮社
- 初出
- 不明
- 刊行情報
- 新潮文庫
流れ星が消えないうちにのあらすじ(ネタバレなし)
大好きな人が死んじゃうよりも、世の中にはもっと悲しいことがある…。つらくって一睡も出来なくても、朝は来るし。涙が涸れるほど泣いてても、やっぱりお腹は空くもので。立ち直りたいなんて思ってなくても、時間はいつでも意地悪で、過ぎ去った日々を物語に変えてしまう-。玄関でしか眠れないわたしと、おバカな僕と、優しすぎる彼を繋ぐ「死」という現実。深い慟哭の後に訪れる、静かな愛と赦しの物語。
作者
橋本 紡 はしもと・つむぐ(1967年9月22日 – )
小説家。三重県伊勢市生まれ。三重県立伊勢高等学校卒業後、家を出るために上京し、東京の大学に入学するものの中退。フリーター生活の傍ら読書を続ける中で作家を目指すようになる。1997年に第4回電撃ゲーム小説大賞にて『猫目狩り』で金賞を受賞しデビュー。代表作に『半分の月がのぼる空』、『流れ星が消えないうちに』などがある。
流れ星が消えないうちにの刊行情報
- 『流れ星が消えないうちに』新潮社、2006年2月
- 『流れ星が消えないうちに』新潮文庫、2008年7月
映画版関連動画
映画『流れ星が消えないうちに』2015年11月21日
監督:柴山健次、出演:波瑠、入江甚儀、葉山奨之、黒島結菜、石田えり
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流れ星が消えないうちにの登場人物
本山 奈緒子(もとやま なおこ)
一軒家で一人暮らしをしている21歳の大学生。かつての恋人・加地が事故で亡くなってしまってから、加地への想いの強さあまりに気持ちの整理がつけられずにいる。そのため、自分の部屋で寝ることができず、現在は玄関で毎晩寝ている。
川嶋 巧(かわしま たくみ)
20歳の大学生で、奈緒子の現在の恋人。当初、ボクシングをしていた。
加地(かじ)
奈緒子とは小学生からの幼馴染にして初恋の相手。一年半前に、旅先の海外で事故死した。
奈緒子の父
3年前佐賀に転勤していたが、突如、奈緒子のもとへ家出して来た。
流れ星が消えないうちにの感想・解説・評価
大切な人の別れと死を扱った恋愛小説
恋人の死もしくは、大切な人の死というのは、作者の前作『半分の月がのぼる空』と同様のテーマです。異なるのはその死が過去のものなのか未来のことなのかという点です。前作は死は約束された未来であったのに対し、本作は過去の変わらないものなのです。
主人公・奈緒子は幼馴染の加地と付き合っていましたが、加地は突然海外で亡くなってしまいます。彼の死の直後は大きな衝撃を受けていた奈緒子も、事故から1年半が過ぎ、新たな恋人をつくっています。
しかし、奈緒子は彼が死んでしまった後、玄関でしか寝られなくなってしまいます。玄関は人が入ってくる場所、そして出ていく場所です。留まる場所ではありません。通りすぎて行く場所であるのです。
作中で、奈緒子の妹・絵里は失恋し、奈緒子の元を訪れます。ですが、絵里は失恋しただけであり、恋人を永遠に失ったわけではありません。実際、絵里は一晩で玄関を去り、彼と再びコミュニケーションを取るようになります。
奈緒子の元を訪れるのは妹だけではありません。父親は奈緒子の家に「家出」してきてしまっています。そこで、考えるよりもまず行動する事を提案され、実践します。ですが、父親は立ち止まって自分の事を振り返りはしません。
奈緒子や絵里とは違い、父親は玄関で夜を過ごしたりはしません。そのためか奈緒子の母との関係はなかなか改善しません。これは新たな一歩を踏み出しても、立ち止まって自分を見ていないからかもしれません。
本作と前作の『半分の月がのぼる空』に共通しているのは、「格好悪さ」です。登場人物たちの行動はスマートではありませんし、青臭く感じるものもあります。それでも登場人物たちの行動を追いかけていくと、そんな格好悪い行動が「格好良く」見えてくることがあります。
これが本作の魅力であり、著者の魅力です。
傍観者から当事者になろうとするもう一人の主人公
もう一人の主人公である巧は、加地と奈緒子のそばにいて、傍観者であろうと思っていました。恋人同士を観ているのは、羨ましかろうが妬ましかろうが、気持ちの良いものであることに違いはないからでしょう。そのときすでに、巧が奈緒子のことを好きだったのかもしれないのに、そう決めたのです。
ですが、加地の死でその決心は崩れ、自ら奈緒子の恋人になります。奈緒子が自分と加地を無意識に比べてしまうのは理解していますし、奈緒子の中では、いまだに加地のほうに切ない思いが強いかも知れません。それでも彼はすべてを飲み込んで、彼女と付き合おうとしているのです。
奈緒子が作中にて泣くこと、それは現実を客観的に見れたということであると思います。過去の恋人を忘れ、現実に向かい合おうとしています。
反対に傍観者だった巧のほうが過去の加地と奈緒子のことばかりを考えてしまいます。その2人の差が妙に悲しく、共感できる小説です。
合わせて読みたい本
半分の月がのぼる空
不治の病に侵された少女と、同じ病院に入院した少年との出会いを通して”いつかは終わりの来る日常”を描く、恋愛小説。作中には過去の文学作品が登場するほか、三重県伊勢市に実在する山が登場する作品です。
本作と同じく、死と恋愛を扱った作者の出世作です。
>>半分の月がのぼる空(橋本紡)のあらすじ(ネタバレなし)・感想