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太宰 治 だざい・おさむ(1909年6月19日 – 1948年6月13日)
小説家。青森県北津軽郡金木村(五所川原市)生まれ。実家は県下有数の大地主で裕福な家庭だった。東京帝国大学文学部仏文学科に入学するも、講義にはついていくことができず、左翼活動での挫折、自殺未遂や薬物中毒など乱れた生活の中、学費未納で除籍される。昭和初期に優れた作品を次々に発表。没落した華族の女性を主人公にした『斜陽』はベストセラーとなるも、愛人・山崎富栄と玉川上水にて入水心中した。
おすすめ作品ランキング
長い記事なので、先におすすめランキングを紹介します!
- 1位:人間失格
- 2位:走れメロス
- 3位:斜陽
太宰治の作品年表リスト
太宰治の小説は、砂子屋書房、竹村書房、河出書房、筑摩書房などから刊行されましたが、現在は主に新潮文庫から刊行されています。
新潮文庫で刊行される際に、初刊発売当時からは収録される作品が変更されている場合もあります。
この記事では、現在手に入りやすい新潮文庫版を中心に紹介します。
晩年(1936年6月)
妻の裏切りを知らされ、共産主義運動から脱落し、心中から生き残った著者が、自殺を前提に遺書のつもりで書き綴った処女作品集。“撰ばれてあることの 慌惚と不安 と二つわれにあり”というヴェルレーヌのエピグラフで始まる『葉』以下、自己の幼・少年時代を感受性豊かに描いた処女作『思い出』、心中事件前後の内面を前衛的手法で告白した『道化の華』など15編より成る。
- 葉
- 思い出
- 魚服記
- 列車
- 地球図
- 猿ヶ島
- 雀こ
- 道化の華
- 猿面冠者
- 逆行
- 彼は昔の彼ならず
- ロマネスク
- 玩具
- 陰火
- めくら草紙
二十世紀旗手(1937年7月)
麻薬中毒と自殺未遂の地獄の日々、小市民のモラルと既成の小説概念のいっさいを否定し破壊せんとした前期作品集。“二十世紀旗手”という選ばれた自負と「生れて、すみません」という廃残意識に引き裂かれた現代人の心情をモザイク的構成のうちに定着させた表題作、後年「人間失格」に集約される精神病院入院の体験を綴った『HUMAN LOST』ほか『虚構の春』『創生期』など7編を収録。
- 狂言の神
- 虚構の春
- 雌に就いて
- 創生期
- 喝采
- 二十世紀旗手
- HUMAN LOST
新樹の言葉(1939年5月)
麻薬中毒と自殺未遂の地獄の日々から立ち直ろうと懸命の努力を重ねていた時期の作品集。乳母の子供たちとの異郷での再会という、心温まる空想譚のなかに再生への祈りをこめた「新樹の言葉」。“男爵”と呼ばれる無垢な男と、昔その家の女中で今は大女優となっている女性との恋愛譚「花燭」。ほかに「懶惰の歌留多」「葉桜と魔笛」「火の鳥」「八十八夜」「老ハイデルベルヒ」など全15編。
- I can speak
- 懶惰の歌留多
- 葉桜と魔笛
- 秋風記
- 新樹の言葉
- 花燭
- 愛と美について
- 火の鳥
- 八十八夜
- 美少女
- 春の盗賊
- 俗天使
- 兄たち
- 老ハイデルベルヒ
- 誰も知らぬ
走れメロス(1939年7月)
恋をしたのだ。そんなことは、全くはじめてであった――。青年の独白から始まる「ダス・ゲマイネ」。かばんひとつさげて、その峠を訪れた。私は、富士に化かされた(「富嶽百景」)。朝、目を覚ましてから寝床に入るまで、少女の心理を鮮やかに捉える「女生徒」。そして、命を賭けた友情をきりりと描いた永遠の名編「走れメロス」。九つの物語が万華鏡のようにきらめく短編集。
きりぎりす(1941年5月)
「おわかれ致します。あなたは、嘘ばかりついていました。……」名声を得ることで破局を迎えた画家夫婦の内面を、妻の告白を通して印象深く描いた表題作など、著者の最も得意とする女性の告白体小説「燈籠」「千代女」。著者の文学観、時代への洞察がうかがわれる随想的作品「鴎」「善蔵を思う」「風の便り」。他に本格的ロマンの「水仙」「日の出前」など、中期の作品から秀作14編を収録。
- 燈籠
- 姥捨
- 黄金風景
- 畜犬談
- おしゃれ童子
- 皮膚と心
- 鴎
- 善蔵を思う
- きりぎりす
- 佐渡
- 千代女
- 風の便り
- 水仙
- 日の出前
新ハムレット(1941年7月)
デカダンス文学の旗手、太宰のもう一つの面、天稟の文学的才能を存分に発揮した知性的作品群の中から、西洋の古典や歴史に取材した作品を収める。「ハムレット」の戯曲形式を踏みながら、そこに現代人の心理的葛藤と現代的悪の典型を描き込んだ表題作、全作品中もっとも技巧をこらした「女の決闘」、人生の本質的意味を数頁に結晶させた「待つ」ほか「古典風」「乞食学生」の全5編。
- 古典風
- 女の決闘
- 乞食学生
- 新ハムレット
- 待つ
津軽(1944年11月)
太宰文学のうちには、旧家に生れた者の暗い宿命がある。古沼のような“家”からどうして脱出するか。さらに自分自身からいかにして逃亡するか。しかしこうした運命を凝視し懐かしく回想するような刹那が、一度彼に訪れた。それは昭和19年、津軽風土記の執筆を依頼され3週間にわたって津軽を旅行したときで、こうして生れた本書は、全作品のなかで特異な位置を占める佳品となった。
惜別(1945年9月)
仙台留学時代の若き日の魯迅と日本人学生とのこころ暖まる交遊の描写を通して、日中戦争という暗く不幸な時代に日中相互理解を訴えた表題作。“アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ”敗戦へとひた走る時代風潮に対する芸術家としての自己の魂を、若き頃からの理想像、源実朝に託して謳う『右大臣実朝』。太宰文学の中期を代表する2編を収める。
お伽草紙(1945年10月)
困難な戦争期にあって、深く芸術世界に沈潜することで時代への抵抗の姿勢を堅持し、日本文学の伝統を支えぬいた太宰中期の作品から、古典や民話に取材したものを収める。“カチカチ山”など誰もが知っている昔話のユーモラスな口調を生かしながら、人間宿命の深淵をかいま見させた「お伽草紙」、西鶴に題材を借り、現世に生きる人間の裸の姿を鋭くとらえた「新釈諸国噺」ほか3編。
- 盲人独笑
- 清貧譚
- 新釈諸国噺
- 竹青
- お伽草紙
「竹青」は諸星大二郎の手によってアレンジされつつ漫画化されています。
もっと読む【書評】瓜子姫の夜・シンデレラの朝(諸星大二郎)のあらすじ(ネタバレなし)感想
パンドラの匣(1946年6月)
「健康道場」という風変りな結核療養所で、迫り来る死におびえながらも、病気と闘い明るくせいいっぱい生きる少年と、彼を囲む善意の人々との交歓を、書簡形式を用いて描いた表題作。社会への門出に当って揺れ動く中学生の内面を、日記形式で巧みに表現した「正義と微笑」。いずれも、著者の年少の友の、実際の日記を素材とした作品で、太宰文学に珍しい明るく希望にみちた青春小説。
ろまん燈籠(1947年7月)
小説好きの五人兄妹が順々に書きついでいく物語のなかに、五人の性格の違いを浮き彫りにするという立体的で野心的な構成をもった「ろまん燈籠」。太平洋戦争突入の日の高揚と虚無感が交錯した心情を、夫とそれを眺める妻との画面から定着させた「新郎」「十二月八日」。日本全体が滅亡に向かってつき進んでいるなかで、曇りない目で文学と生活と戦時下の庶民の姿を見つめた16編。
- ろまん燈籠
- みみずく通信
- 服装に就いて
- 令嬢アユ
- 誰
- 恥
- 新郎
- 十二月八日
- 小さいアルバム
- 禁酒の心
- 鉄面皮
- 作家の手帖
- 佳日
- 散華
- 雪の夜の話
- 東京だより
ヴィヨンの妻(1947年8月)
新生への希望と、戦争を経験しても毫も変らぬ現実への絶望感との間を揺れ動きながら、命がけで新しい倫理を求めようとした晩年の文学的総決算ともいえる代表的短編集。家庭のエゴイズムを憎悪しつつ、新しい家庭への夢を文学へと完璧に昇華させた表題作、ほか「親友交歓」「トカトントン」「父」「母」「おさん」「家庭の幸福」「桜桃」、いずれも死の予感に彩られた作品である。
- 親友交歓
- トカトントン
- 父
- 母
- ヴィヨンの妻
- おさん
- 家庭の幸福
- 桜桃
斜陽(1947年12月)
破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため”生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、最後の貴婦人である母、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、“斜陽族”という言葉を生んだ太宰文学の代表作。
人間失格(1948年7月)
「恥の多い生涯を送って来ました」。そんな身もふたもない告白から男の手記は始まる。男は自分を偽り、ひとを欺き、取り返しようのない過ちを犯し、「失格」の判定を自らにくだす。でも、男が不在になると、彼を懐かしんで、ある女性は語るのだ。「とても素直で、よく気がきいて(中略)神様みたいないい子でした」と。ひとがひととして、ひとと生きる意味を問う、太宰治、捨て身の問題作。
グッド・バイ(1948年7月)
被災・疎開の極限状況から敗戦という未曽有の経験の中で、我が身を燃焼させつつ書きのこした後期作品16編。太宰最後の境地をかいま見させる未完の絶筆「グッド・バイ」をはじめ、時代の転換に触発された痛切なる告白「苦悩の年鑑」「十五年間」、戦前戦中と毫も変らない戦後の現実、どうにもならぬ日本人への絶望を吐露した2戯曲「冬の花火」「春の枯葉」ほか「饗応夫人」「眉山」など。
- 薄明
- 苦悩の年鑑
- 十五年間
- たずねびと
- 男女同権
- 冬の花火
- 春の枯葉
- メリイクリスマス
- フォスフォレッセンス
- 朝
- 饗応夫人
- 美男子と煙草
- 眉山
- 女類
- 渡り鳥
- グッド・バイ
津軽通信
疎開先の津軽の生家で書き綴られた、新しい自由な時代を迎えた心の躍動が脈うつ珠玉編『津軽通信』。原稿用紙十枚前後の枠のなかで、創作技巧の限りをつくそうと試みた中期の作品群『短篇集』。戦時下の諷刺小説『黄村先生言行録』シリーズ。各時期の連作作品を中心に据えて、それに戦後期の『未帰還の友に』『チャンス』『女神』『犯人』『酒の追憶』を加えて編集した、異色の一冊。
もの思う葦
自殺未遂、麻薬中毒、血みどろの苦闘のなかで『晩年』と並行して書かれた『もの思う葦』から、死を賭して文壇大家に捨て身の抗議を行うために『人間失格』と並行して書かれた『如是我聞』まで。太宰治の創作活動の全期間にわたって、天稟の文学的才能と人間的やさしさをきらめかせているアフォリズム、エッセイ『走ラヌ名馬』『かくめい』『酒ぎらい』『川端康成へ』など49編を収録。
地図(2009年4月)
石垣島制圧に沸く琉球国を、祝賀のため訪れた蘭人たち。彼らが献上した軸物を見るや国王はたちまち顔面蒼白になった……。表題作「地図」をはじめ、「怪談」「花火」など同人誌等掲載の初期作品を通して、中学生津島修治から作家太宰治誕生までのドラマを読む特別篇。後年、太宰の筆と確認された「断崖の錯覚」や、文庫初収録の「貨幣」「律子と貞子」など文豪への出発点を刻印する作品群。
- 最後の太閤
- 戯曲 虚勢
- 角力
- 犠牲
- 地図
- 負けぎらいト敗北ト
- 私のシゴト
- 針医の圭樹
- 瘤
- 将軍
- 哄笑に至る
- 口紅
- モナコ小景
- 怪談
- 掌劇 名君
- 股をくぐる
- 彼等と其のいとしき母
- 此の夫婦
- 鈴打
- 哀蚊
- 花火
- 虎徹宵話
- 断崖の錯覚
- あさましきもの
- 律子と貞子
- 赤心
- 貨幣
- 洋之助の気焔
太宰治全集
全集で読みたいのなら、ちくまの文庫全集が良いと思います。
比較的安価でまとめられており、文字の大きさや註など読みやすいです。