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参議院選埼玉補選が行われた結果、上田清司前知事が当選となった。
参院埼玉補選 上田前知事が当選 与野党が「相乗り」 https://t.co/sKEEFsltMW
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) 2019年10月27日
この結果は選挙前の予想の通りであり、なんら驚くところではなかった。Twitterのトレンドにも入ったように、話題になったのはその投票率の低さだった。共同通信が報じたところによると、その投票率は20.81%。約5人に1人しか投票に行かなかったということだ。
参院埼玉補選の投票率は20.81%https://t.co/EhHeM2R3wW
— 共同通信公式 (@kyodo_official) 2019年10月27日
僕も選挙が盛り上がらないことは予想していたが、さすがに3分の1くらいは超えると思っていた、具体的なパーセントで言うと37とか、38とかそのくらいになるのではと想定していた。それが約20%にとどまったのだから、驚きは当然だろう。
この低投票率を受けて、早速と言っていいくらいTwitterでは投票に行かなかった人を責める論調を見かける。「低投票率だと組織票のある与党が有利だ」「国民の義務を放棄している」「罰金を科したらどうだ。実際にそうしている国もある」「普通選挙が実施されるまでにどれだけの苦労があったと思っているんだ」…
なるほど、一見もっともらしく見える主張である。
しかし、僕はそれらの主張に軽々に賛成しない。僕は上のような主張がN国の躍進を支え、前回の参議院議員選挙でN国を国政政党に押し上げたと思っているからだ。
あまりにひどい与野党相乗り
自民 参議院埼玉補選の候補者擁立見送り #nhk_news https://t.co/ls8okjCR7J
— NHKニュース (@nhk_news) 2019年10月1日
参議院埼玉補選が”盛り上がらなかった”最大の理由は「与野党が相乗り」したことに間違いない。当選した上田さんは無所属ということになっているけれど、事実上は野党統一候補だった。
それに対し、自民党は候補者の擁立を断念。与党は「自主投票」ということになった。上田さんに対抗できる人材がいないと分かると、こともあろうに上田さんの応援演説に弁士を送るという行動に出た。つまり、「下手な人材を立てて負けるくらいなら、最初から上田さんを応援してしまえば負けたということにはならない」ということにしたのだ。
上田さんの応援演説に駆けつけた面々を見れば、「あらら…」と思うことだろう。僕も実際、noteに埼玉補選についての記事を書く気力を失う有様だった。
noteに政治的なオピニオン記事を書こうかなと思ってたけど、参議院埼玉補選の与野党相乗りってひどすぎる現状を見て記事書く気力もなくなってきた…結局政治ってプロレスなんだろうね
— 右手@文学&漫画ブロガー (@migite1924) 2019年10月20日
というわけで何もなければ無投票当選…ということになりそうだったのだが、突如としてN国の立花党首が立候補を表明。参議院議員の座を辞して立候補と相成った。
そのため埼玉補選は与野党vsN国という構図になった。
そもそも野党統一候補どころか、与野党統一候補が出ていて、その対抗馬が党首とはいえN国では、あまりにも贅沢すぎる選択肢である。政治に関心のある僕でも、ため息をつかずにはいられない構図であり、選挙権を有していた人たちの頭痛が伝わってくるようだ。
そもそも立花さんは衆院選には議員辞職するということを以前から言っていて、今回の辞職はそれが少しばかり早まっただけに過ぎない。N国の議席は第2位の候補者に行くから減らないし、立花さんとしては立候補して話題をかっさらえば、次回の衆院選での得票数の増加も期待できると、デメリットなんて些細なものである。この辺が「自分が国会議員でないといけない」既存政党とはフットワーク(とモラル)が違うところだ。
選挙に行かない人を責めると、N国は躍進する
低投票率のワケ
せめて自民と野党統一候補、そしてN国の三つ巴になれば話は違ったのだろうが(自民が候補を擁立していたら立花党首が立候補していたかはともかく)、与野党vsN国となれば、もう結果は見えている。
与野党相乗りでは政策議論もあったものではないし、選挙に行ったのは「毎回必ず行っている人」「”組織票”の人」「N国を応援している人(そして嫌っている人)」くらいなものだろう。「どうせ行こうが行かまいが上田さんで決まりでしょう?」という雰囲気はすごかったし、実際にそうなった。
NHKが出口調査で「今回の選挙でなぜ投票に行こうと思ったか」たずねたところ、「有権者としての責任を果たすため」と答えた人が最も多く51%。次いで「いつも投票に行っているから」と答えた人が20%。「当選させたくない候補がいるから」と答えた人が15%など。https://t.co/wU3c205Yfv
— NHK@首都圏 (@nhk_shutoken) 2019年10月27日
NHKが出口調査で「今回の選挙で活発な政策論争が行われたと思うか」たずねたところ「あまり思わない」と答えた人は51%、「全く思わない」が31%で、活発な政策論争が行われたと思わない人が8割に達した。一方「ある程度思う」は16%、「とても思う」は2%。https://t.co/wU3c205Yfv
— NHK@首都圏 (@nhk_shutoken) 2019年10月27日
先ほども書いたように、この低投票率を受けて、Twitterでは投票に行かなかった人を責める論調を見かける。「低投票率だと組織票のある与党が有利だ」「国民の義務を放棄している」「罰金を科したらどうだ。実際にそうしている国もある」「普通選挙が実施されるまでにどれだけの苦労があったと思っているんだ」…
もちろん投票率は高ければ高いほどいいだろう。(だからといって北朝鮮の例を出さないでね)投票率が20%より、40、60、80…の結果として選ばれた代表が国会に行ってほしいと思う。
だが、だからといって、選挙に行かない人を紋切型の言葉で批判するのは危険だ。
N国に投票するのはN国支持者だけではない
僕が言うまでもないが、有権者の間にもいろいろな人がいる。
ずっと自民党に投票してきた人、政党は関係なく支持している候補者がいる人、あんまり政治に興味はないけど頼まれて投票に行く人、どこでもいいけどとりあえず選挙には行く人。
そんな中、N国に投票するのはN国支持者だけではない。
ここでは、前回の参議院議員選挙で僕が投票を行った選挙区を例に出そう。この選挙区では自民党候補(与党)、無所属候補(野党統一候補)、N国候補の三つ巴になっていた。実際、こういう選挙区はかなり多かったのではないかと思う。一人選出なのだから、与党の候補は一人だし、野党は統一候補を出していた。そしてN国はかなりの人数の候補者を擁立したからである。
こういった選挙区の場合、与党支持者、N国以外の野党支持者の投票行動は明確だ。しかし、問題となるのは、無党派層である。とくに「自民党政権は長いけど景気は悪いし、かといってまた民主党政権になるのもなぁ…」と考えているタイプだ。
本当なら選挙に行かなくてもいいんだけど、「国民の義務とやららしいから行く」「ネットで『選挙行かないやつは政治に文句言うなよ』とか言うやついるしなぁ」とアリバイ作りに投票することになる。この選挙区なら、与党か野党統一候補のどちらかが当選するだろう。もし当選したほうに入れた場合、その候補を応援していないのに結果的に国会に送りだすことになる。
無党派層はこれを嫌がるのだ。その議員が不祥事を起こした際に「誰だよこいつに投票したやつ」などと言われたくないのである。その党が非難されるときに「こんな党でも投票するやついるからなぁ」と言われたくないのだ。そのため、「絶対に当選しない」N国に入れるという行動が生まれる。
その結果、N国は「全体の2%」という政党要件を満たし国政政党となった。「NHKをぶっ壊す!」というフレーズや政見放送の動画が拡散されたとは言っても、それだけで政党要件を満たすことは困難だったはずだ。
SNSで「選挙に行くのは義務です」「選挙行かないやつは政治に文句言うなよ」という論旨を展開しているのは、野党支持者が多いだろう。「安倍政権にNO!」という主張をしている一派だ。しかしその結果が野党統一候補ではなく、N国の躍進を手助けしたとなればこんなに皮肉なことはない。
僕の「選挙に行かない人を責めると、N国は躍進する」という主張は一面的かもしれない。しかしアリバイ作りの投票行動でN国のような”ワンイシュー以外の案件では政策論争に参加しない”政党に躍進されては困る。衆院選ではこの結果を繰り返してほしくはない。
かつて政治学者の丸山眞男は「私生活を楽しもうとする人々の政治的無関心が広がっており、これは支配層にとって都合が良い」と指摘した。これは多くの賛同を集めたが、すべての進歩派知識人がこの意見に同調したわけではなかった。吉本隆明は「これが戦後『民主』の基底をなしている」と反発した。現在も戦後は続いているのか(安倍首相は「戦後レジーム」という言葉を使いますね)、この批判が正しいのかは難しい。
しかし、政治的主張において「すべての政策が全員にとって絶対的に正しい」ということはあり得ない。自分の投稿がどれだけのプラスの効果とマイナスの効果を生むのか、そのことに考えを巡らせる良い機会だと思う。
開票結果です
参議院埼玉選挙区の補欠選挙は開票が終了。
— NHK@首都圏 (@nhk_shutoken) 2019年10月27日
上田清司、無所属・新、当選、106万5390票
立花孝志、NHKから国民を守る党・前、16万8289票
前の埼玉県知事の上田氏が、初めての当選を果たした。https://t.co/rtdnazJNM0