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村上 春樹 むらかみ・はるき(1949年1月12日 – )
小説家、翻訳家。京都府京都市伏見区に生まれ、兵庫県西宮市・芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部卒。1979年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビュー。1987年発表の『ノルウェイの森』は上下巻1000万部を売るベストセラーとなり、これをきっかけに村上春樹ブームが起きる。代表作に『羊をめぐる冒険』、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、『ねじまき鳥クロニクル』、『海辺のカフカ』、『1Q84』などがある。
小説家としてだけでなく、フィッツジェラルドやチャンドラー作品など多数の作品を翻訳している。
結局村上春樹はどれがおすすめなの?
作品数が多すぎて、わけがわからなくなってしまったので、最初におすすめ作品のまとめです。
『風の歌を聴け』(デビュー作)
↓
『ノルウェイの森』(リアル目な長編小説)
『海辺のカフカ』(不思議な長編小説)
『象の消滅 短篇選集 1980-1991』(短篇集)
『村上ラヂオ』(エッセイ)
『遠い太鼓』(旅行記)
『翻訳夜話』(翻訳)
『村上さんのところ』(読者とのやりとり)
↓
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(いずれは読んでほしい!)
まずはデビュー作から読んでみてほしいです。その後は興味のあるジャンルの本を読んで読んでみましょう。各ジャンルのおすすめは上の通りです。
短編集なら『象の消滅 短篇選集 1980-1991』が一番おすすめで、次は『螢・納屋を焼く・その他の短編』ですね。
きっと気に入る作品が見つかると思います。
村上春樹の作品年表リスト
村上春樹はたくさん海外作品の翻訳を行っていますが、今回は紹介しませんでした。それでもめちゃくちゃ冊数があります。
高校生のときにハマり、大学時代には村上春樹で卒論を書きました。各作品の簡単に紹介しつつ、全作品を刊行順に並べてリストにしました。
ぜひ読んでいない本の確認や、どの本を読むかの参考にしてみてください。
風の歌を聴け(1979年7月)
1970年の夏、海辺の街に帰省した<僕>は、友人の<鼠>とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、<僕>の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。
群像新人文学賞を受賞したデビュー作です。
自分の文体を獲得するために試行錯誤されていたそうで、デビュー作ながらすでに世界観は完成されています。
入門としてもおすすめの作品です。
1973年のピンボール(1980年6月)
さようなら、3(スリー)フリッパーのスペースシップ。さようなら、ジェイズ・バー。双子の姉妹との<僕>の日々。女の温もりに沈む<鼠>の渇き。やがて来る1つの季節の終り――デビュー作『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く3部作のうち、大いなる予感に満ちた第2弾。
デビュー2作目。主人公は「風の歌を聴け」と同じ人物です。
その意味で「風の歌を聴け」を先に読んでほしいですね。前作同様、芥川賞にノミネートされましたが、残念ながら落選となりました。
ウォーク・ドント・ラン(1981年7月)
同年代の人気作家で親交のある村上龍との対談本です。
再版されておらず残念ながら絶版プレミア。僕も持っていないので、借りて読んだことしかありません。
いまの時代からすると、ちょっと…という考えもあり、文庫化などは期待薄かもしれません。
夢で会いましょう(1981年10月)
強烈な個性と個性がぶつかりあう時、どんな火花が飛び散るか――それがこの本の狙いです。同時代を代表する2人が、カタカナ文字の外来語をテーマにショートショートを競作すると、こんな素敵な世界があらわれました。さあ、2種類の原酒が溶けあってできた微妙なカクテルの酔い心地をじっくりとどうぞ。
村上春樹と糸井重里の2人の作品が交互に登場するショートショート集です。
糸井重里のファンじゃないと少しハマらないかもしれません。
羊をめぐる冒険(1982年10月)
あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている21歳の女性が新しいガール・フレンドとなった。北海道に渡ったらしい<鼠>の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。新しい文学の扉をひらいた村上春樹の代表作長編。
「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」から続く3作目です。野間文芸新人賞を受賞しました。
3作続いてきた「僕」と「鼠」の物語が一旦幕を下ろすことになります。終盤の展開や文章が美しいです。
「羊をめぐる冒険」から読んでもいいですが、順番に読んでほしいです。
中国行きのスロウ・ボート(1983年5月)
様々な雑誌に短篇を書きまくっていた村上春樹初の短篇集として刊行されました。
ジャンルは様々、でもセンスは抜群です。個人的には「午後の最後の芝生」が好きですが、ほかの作品の印象は薄いです。
カンガルー日和(1983年10月)
「ねえ、あの袋の中に入るって素敵だと思わない?」…表題作/「ねえ、もう一度だけ試してみよう。もし僕たち二人が本当に100パーセントの恋人同士だったら、いつか必ずどこかでまためぐり会えるに違いない」…「4月のある晴れた日に100%の女の子に出会うことについて」村上春樹が「毎月一篇ずつ楽しんだり苦しんだりしながら生み出してきた」、都会の片隅のささやかな18篇のメルヘン。
ショートショートといってもいいくらい、短編小説の中でも短めの作品が集められた短編集です。
大ヒットした「君の名は。」のモデルになったのでは?とファンの間で話題になった「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」が収録されています。
象工場のハッピーエンド(1983年12月)
都会的なセンチメンタリズムに充ちた13の短編と、カラフルなイラストが奏でる素敵なハーモニー。語り下ろし対談も収録した新編集。
村上春樹の短い文章と安西水丸さんの挿絵を楽しめる一冊です。
ただ、どちらかというと安西水丸さんの挿絵のイメージが強いです。
波の絵、波の話(1984年3月)
激しい波。やさしい波。南の波。沖の波。岸辺の波……母なる海のさまざまな表情を、シャープな眼と心でとらえたフォト・エッセイ。
写真家・稲越功一さんとのコラボ作品。
フォトエッセイとも言えますし、写真集とも言えます。絶版ですし、入門用というよりコアなファン向けの一冊です。
螢・納屋を焼く・その他の短編(1984年7月)
秋が終り冷たい風が吹くようになると、彼女は時々僕の腕に体を寄せた。ダッフル・コートの厚い布地をとおして、僕は彼女の息づかいを感じとることができた。でも、それだけだった。彼女の求めているのは僕の腕ではなく、誰かの腕だった。僕の温もりではなく、誰かの温もりだった……。もう戻っては来ないあの時の、まなざし、語らい、想い、そして痛み。リリックな七つの短編。
表題作の「螢」以下5作品が収められた短編集です。
「螢」はその後、大ベストセラー『ノルウェイの森』へと発展することになりました。
短篇を読んでみたいのならおすすめです。
村上朝日堂(1984年7月)
ビールと豆腐と引越しとヤクルト・スワローズが好きで、蟻ととかげと毛虫とフリオ・イグレシアスが嫌いで、あるときはムーミン・パパに、またあるときはロンメル将軍に思いを馳せる。そんな「村上春樹ワールド」を、ご存じ安西水丸画伯のイラストが彩ります。巻末には文・安西、画・村上と立場を替えた「逆転コラム」付き。これ一冊であなたも春樹&水丸ファミリーの仲間入り!?
エッセイの評価もとても高い村上春樹初のエッセイ集です。
1編が短く、とくにオチがあるわけでもありませんが、読んでいて楽しいです。
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(1985年6月)
高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。
2年ぶりの長編小説は「僕」と「鼠」から離れた初の長編作品となりました。
読者の中でもとりわけ評価の高い作品で、個人的にも最高傑作だと思っています。
少し難解なところがあり、序盤で脱落しがち。ですが一度は手に取ってほしいです。
回転木馬のデッド・ヒート(1985年10月)
「それはメリー・ゴーラウンドによく似ている。それは定まった 場所を定まった速度で巡回しているだけのことなのだ。どこにも行かないし、降りることも乗りかえることもできない。誰をも抜かないし、誰にも抜かれない」人生という回転木馬の上で、人は仮想の敵に向けて熾烈なデッド・ヒートをくりひろげる。事実と小説とのあわいを絶妙にすくいとった、村上春樹の8つのスケッチ。
他人から聞かされた話を小説として書いたという一風変わった短篇集です。
さらっと読めるんですが、少しさらっとしすぎている感じもあります。
羊男のクリスマス (1985年11月)
聖羊祭日にドーナツを食べた呪いの為クリスマスソングが作曲できない羊男は、穴のあいてないねじりドーナツを手に秘密の穴の底におりていきました。暗い穴を抜けるとそこには――。なつかしい羊博士や双子の女の子、ねじけやなんでもなしも登場して、あなたを素敵なクリスマスパーティにご招待します。
全体的に絵本のような本です。
様々な作品に出てくる「羊男」がメイン。村上春樹ワールド全開ですが、個人的に絵本はそれほど夢中になれないんですよね。
映画をめぐる冒険(1985年12月)
様々なジャンルの映画に対して、川本三郎さんと一緒にコメントを書いたものです。
表紙に名前が並んでいるので、対談や座談会を書き起こしたものかと思いきやそうではなく別々です。
パン屋再襲撃(1986年4月)
妻は断言した、「もう一度パン屋を襲うのよ」彼にかけられた呪いを解くための企みはいかに!? 村上ワールド全開の初期の傑作短篇集。
短編集です。
パン屋を襲うことを提案されるという「パン屋再襲撃」が一番好きです。伊坂幸太郎の「アヒルと鴨のコインロッカー」に影響を与えたのかも。
村上朝日堂の逆襲(1986年6月)
交通ストと床屋と教訓的な話とハワイで食べる冷麦が好き。高いところと猫のいない生活とスーツが苦手。時には「セーラー服を着た鉛筆」について考察するかと思うと、小津安二郎の映画の細部(ディテイル)にこだわったりもする。「自由業の問題点について」に始まって、「長距離ランナーの麦酒」に終わる、御存じ、文・村上春樹とイラスト・安西水丸のコンビが読者に贈る素敵なワンダーランド。
とてもスラスラと読めておもしろいエッセイ集です。
当時の世相も知ることができますね。
ランゲルハンス島の午後(1986年11月)
カラフルで夢があふれるイラストと、その隣に気持ちよさそうに寄りそうハートウォーミングなエッセイでつづる25編。
安西水丸さんの絵と、ライトなエッセイが楽しめる一冊。
ちょっと疲れているけど、寝る前になにか本を読みたいというときにうってつけの一冊です。
THE SCRAP 懐かしの一九八〇年代(1987年2月)
アメリカの新聞雑誌から選んだ、おいしい話題がいっぱい。「近過去トリップ」を楽しむうち、ふとノスタルジックな気分になるから不思議だ。軽妙酒脱な"話の屑籠"。
当時の時事ネタについて書いた一冊。
若い人には固有名詞や単語がわからないかも。
日出る国の工場(1987年4月)
好奇心で選んだ七つの工場を、御存じ、春樹&水丸コンビが訪ねます。カラーイラストとエッセイでつづる、楽しい〈工場〉訪問記。
様々な工場を訪問した様子をまとめた一冊。
ほのぼのとした文章でもありながら、モノづくりについて踏み込んだ部分もあり、職人としての一面が垣間見えるかもしれません。
ノルウェイの森(1987年9月)
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
言わずと知れた大ベストセラー小説です。
恋愛・恋人(妻)との別離・死・アルコール・性・文学・音楽など村上文学を構成するキーワードが片っ端から盛り込まれています。
村上春樹の代表作として必ず名前の挙がる作品であり、入門としてもおすすめ。絶対に読んでほしい作品です。
ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック(1988年4月)
翻訳作品は紹介しなかったんですが、今作にはフィッツジェラルドについてのエッセイも書かれています。
アメリカ文学に馴染みのない人も、この本から手を出してみるのはアリです。
フィッツジェラルド、サリンジャー、ブローティガン、ヴォネガットなどを読むと、村上春樹が影響を受けたことがわかると思います。
ダンス・ダンス・ダンス(1988年10月)
『羊をめぐる冒険』から4年、激しく雪の降りしきる札幌の街から「僕」の新しい冒険が始まる。奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。70年代の魂の遍歴を辿った著者が80年代を舞台に、新たな価値を求めて闇と光の交錯を鮮やかに描きあげた話題作。
久しぶりに「僕」と「鼠」の物語が描かれました。四部作の四作目となります。
アメとユキの親子や、五反田君、ユミヨシさんなど魅力的な人物が数多く登場します。登場人物だけで選べば、一番好きな小説です。
村上朝日堂はいほー! (1989年5月)
本書を一読すれば、誰でも村上ワールドの仲間になれます。安西水丸画伯のイラスト入りで贈る、村上春樹のエッセンス、全31編!
「村上朝日堂」の3作目です。
明るい雰囲気は健在。時代がついに平成へと向かっていきます。
TVピープル(1990年1月)
不意に部屋に侵入してきたTVピープル。詩を読むようにひとりごとを言う若者。男にとても犯されやすいという特性をもつ美しい女性建築家。17日間一睡もできず、さらに目が冴えている女。―それぞれが謎をかけてくるような、怖くて、奇妙な世界をつくりだす。作家の新しい到達点を示す、魅惑にみちた六つの短篇。表題作「TVピープル」のほかに、「飛行機―あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか」、「我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史」、「加納クレタ」、「ゾンビ」、「眠り」。生と死、現実と非現実のあいだの壁が取り払われて、さて何が起こるのか。小説の領域を一挙に拡大する作家の、新しい到達点を示す。
春樹ワールド全開の短編集です。
日常の中に含まれる不条理や不思議な風景を切り取っています。少し変わった不気味な作品が多いです。
遠い太鼓(1990年6月)
ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきた。その音を聞いているうちに、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ――。40歳になろうとしていた著者は、ある思いに駆られて日本を後にし、ギリシャ・イタリアへ長い旅に出る。『ノルウェイの森』と『ダンス・ダンス・ダンス』を書き上げ、作家としての転換期となった、三年間の異国生活のスケッチブック。
ギリシャ・イタリアに滞在したときの旅行記・エッセイをまとめた一冊です。
将棋の藤井プロが読んでいると話題にもなりました。様々な国を舞台に旅行記を書かれていますが、南ヨーロッパの人々のゆったりとした雰囲気が出ているこの本が一番好きです。
旅行記を読んでみたい!と思っているのならまずおすすめな一冊です。
PAPARAZZI(1990年7月)
パパラッチというタイトルの通り、有名人と写真を扱った一冊です。
失礼ながらファンの間でも読んでいるという人をあまり見たことがありません。
雨天炎天(1990年8月)
「女」と名のつくものはたとえ動物であろうと入れない、ギリシャ正教の聖地アトス。険しい山道にも、厳しい天候にも、粗食にも負けず、アトスの山中を修道院から修道院へひたすら歩くギリシャ編。一転、若葉マークの四駆を駆って、ボスフォラス海峡を抜け、兵隊と羊と埃がいっぱいのトルコ一周の旅へ――。雨に降られ太陽に焙られ埃にまみれつつ、タフでハードな冒険の旅は続く!
旅行記第2弾です。今作の舞台はギリシャ・トルコ。
これだけでもおもしろいんですが、できれば「遠い太鼓」から読んでほしいです。
国境の南、太陽の西(1992年10月)
今の僕という存在に何らかの意味を見いだそうとするなら、僕は力の及ぶかぎりその作業を続けていかなくてはならないだろう――たぶん。「ジャズを流す上品なバー」を経営する、絵に描いたように幸せな僕の前にかつて好きだった女性が現われて――。日常に潜む不安をみずみずしく描く話題作、待望の文庫化。
僕が大学時代に卒業論文を書いた小説です。
当時論文を読み漁りましたが、残念なことに文壇の評価はいま一つ。その理由もなんとなくわかってしまうくらい主人公がなよなよと頼りない小説でもあります。
でも、僕は一番好きな小説です。「実はこの小説が一番好き!」って人が意外と多い作品だと思います。
やがて哀しき外国語(1994年2月)
F・スコット・フィッツジェラルドの母校プリンストン大学に招かれ、アメリカでの暮らしが始まった。独自の大学村スノビズム、スティーブン・キング的アメリカ郊外事情、本場でジャズについて思うこと、フェミニズムをめぐる考察、海外で悩み苦しむ床屋問題――。『国境の南、太陽の西』と『ねじまき鳥クロニクル』を執筆した二年あまりをつづった、十六通のプリンストン便り。
村上春樹が影響を受けたのが、アメリカの作家・フィッツジェラルドです。彼の母校であるプリンストン大学に招かれたため、アメリカで暮らすことになりました。
アメリカの旅行記としても楽しめますし、なにより英語や言語について書かれています。翻訳に興味がある人ならより楽しめると思います。
ねじまき鳥クロニクル(1994年4月)
村上作品の大きなテーマの一つである「恋人との別離」を描いた長編小説です。
とても美味しそうな料理の描写など、魅力的なシーンがたくさんあります。ただ、難しいところもある長編小説の中でもとくに難解な作品で、初めて読む作品としてはおすすめできません。
いくつか他の作品を読んでから手を出してみてほしいです。
使いみちのない風景(1994年12月)
数々の写真と共に、文章が綴られています。
あっさりと読めつつ、様々な思慮・考察の結果が盛り込まれています。「あの小説のことを言ってるのかな…」と分かるので、他の作品を読んでからのほうがおすすめです。
夜のくもざる(1995年6月)
海亀の執拗な攻撃から僕らの身を守ってくれた秘密兵器とは? ヒトは死んだらどこにいくのだろう? ――読者が参加する小説「ストッキング」から、オール関西弁で書かれた「ことわざ」まで、謎とユーモアに満ちた「超短篇」小説が36本! (さらに替え歌「朝からラーメン」のおまけ付き! )絶好調の村上春樹=安西水丸“nice & easy”コンビが贈る「村上朝日堂」小説特集号!
ショートショート集です。
こちらもあっさりと読めますが、短すぎて物足りない印象でした。
うずまき猫のみつけかた―村上朝日堂ジャーナル(1996年5月)
アメリカのケンブリッジに住んだ1993年から1995年にかけての滞在記。ボストン・マラソンに向けて昂揚していく街の表情、「猫の喜ぶビデオ」の驚くべき効果、年末に車が盗まれて困り果てた話、等々なごやか(?)なエピソードの中に、追悼特集で報じられたニクソン元大統領の意外な一面や、帰国後訪れた震災後の神戸の光景がキラリと光る。水丸画伯と陽子夫人が絵と写真で参加した絵日記風エッセイ集。
「村上朝日堂」と副題についていますが、アメリカ滞在中のエッセイをまとめたもので、実質的には「やがて哀しき外国語」の続編です。
のちに「当時のアメリカのマッチョな雰囲気は好きになれなかった」と語るアメリカ滞在中の様子を知ることができます。
「やがて哀しき外国語」を先にどうぞ。
レキシントンの幽霊(1996年11月)
氷男は南極に戻り、獣はドアの隙間から忍び込む。幽霊たちはパーティに興じ、チョコレートは音もなく溶けてゆく。短篇七篇を収録。
表題作の「幽霊」というワードにもあるように、恐怖・孤独など人間のマイナスな感情に着目した作品集です。
独特の雰囲気を持っている村上春樹作品の中でもエッジの利いた短編集で、最初に読むのにおすすめはしないかなという感じです。
村上春樹、河合隼雄に会いにいく(1996年12月)
村上春樹が語るアメリカ体験や1960年代学生紛争、オウム事件と阪神大震災の衝撃を、河合隼雄は深く受けとめ、箱庭療法の奥深さや、一人一人が独自の「物語」を生きることの重要さを訴える。「個人は日本歴史といかに結びつくか」から「結婚生活の勘どころ」まで、現場の最先端からの思索はやがて、疲弊した日本社会こそ、いまポジティブな転換点にあることを浮き彫りにする。
心理学者である河合隼雄さんとの対談集です。対談上手な河合さんの話術が巧みで村上春樹の内面が引き出されていきます。
オウム、阪神大震災など、暴力や悲劇というものについての関心が深かった様子。この時代の作品に、人間の負の面を描いたものが多かったのも頷けます。
アンダーグラウンド(1997年3月)
1995年3月20日の朝、東京の地下でほんとうに何が起こったのか。同年1月の阪神大震災につづいて日本中を震撼させたオウム真理教団による地下鉄サリン事件。この事件を境に日本人はどこへ行こうとしているのか、62人の関係者にインタビューを重ね、村上春樹が真相に迫るノンフィクション書き下ろし。
地下鉄サリン事件に巻き込まれた被害者の方々へのインタビュー集です。
それまで人間の内面や個人を描いていた作者が、社会的問題を扱ったということで大きな話題になりました。
とても重くハードな一冊で、非常に読みごたえがあります。
村上朝日堂はいかにして鍛えられたか(1997年6月)
裸で家事をする主婦は正しいのか? あなたの空中浮遊の夢はどのタイプ? 読者から多数の反響を呼んだ「通信」シリーズを筆頭に、「真昼の回転鮨にしかけられた恐怖の落とし穴」「宇宙人には知られたくない言葉」から、苦情の手紙の書き方、学校の体罰の問題まで、世紀末の日本を綴ったエッセイを水丸画伯のイラストがサポートする、名コンビ「村上朝日堂」シリーズ最新作!
人気エッセイシリーズ・村上朝日堂の一冊。
前作のアメリカからは離れ、様々な話題について筆を走らせています。日本語について、心理について、猫について、マラソンについて…
話題のなかにはいくらでも難しくできるものもありますが、小難しく語るのではなくユーモアを交えて自分の考えを書かれています。
若い読者のための短編小説案内(1997年10月)
吉行、安岡、丸谷……。あの村上春樹が、戦後の作家六人の小説をあっと驚く新鮮な視点から読み解く。創作の秘密を明かす刺激的な本。
吉行淳之介、小島信夫、安岡章太郎など先輩作家たちの作品を紹介した本です。
本人が語っているように、村上春樹=日本文学のイメージはあまりありません。その中で楽しく読んだという作品が紹介されています。
作品がどうこうというより、村上春樹がどのようにその本を読んだのか、という点が興味深いです。
ポートレイト・イン・ジャズ(1997年12月)
和田誠が描くミュージシャンの肖像に、村上春樹がエッセイを添えたジャズ名鑑。ともに十代でジャズに出会い、数多くの名演奏を聴きこんできた二人が選びに選んだのは、マニアを唸らせ、入門者を暖かく迎えるよりすぐりのラインアップ。著者(村上)が所蔵するLPジャケットの貴重な写真も満載! 単行本二冊を収録し、あらたにボーナス・トラック三篇を加えた増補決定版。
作品の中で名脇役と言ってもいい、レコードやジャズについて書かれています。
僕はレコードやジャズに馴染みのない世代で、あまりピンときませんでした。
辺境・近境(1998年4月)
久しぶりにリュックを肩にかけた。「うん、これだよ、この感じなんだ」めざすはモンゴル草原、北米横断、砂埃舞うメキシコの町……。NY郊外の超豪華コッテージに圧倒され、無人の島・からす島では虫の大群の大襲撃! 旅の最後は震災に見舞われた故郷・神戸。ご存じ、写真のエイゾー君と、讃岐のディープなうどん紀行には、安西水丸画伯も飛び入り、ムラカミの旅は続きます。
メキシコ・アメリカ・神戸など、各地を旅した旅行記です。
「ねじまき鳥クロニクル」にも登場する、ノモンハンの章はファンならぜひ読んでほしいです。
辺境・近境 写真篇(1998年5月)
エイゾー君が撮った、もうひとつの「辺境・近境」。ハルキさんが中国の動物園で抱いた虎の子も、草原の狼も、打ち捨てられた戦車も、ゴールドラッシュの夢の跡も、エイゾー君が石を投げられたメキシコの村も、みんなここにあります。「裏庭で太い薪をごつごつと割る鉈みたいな」写真が、村上春樹のタフでファンキーな旅の全て、文章とは一味ちがう作家の旅の醍醐味を見せてくれます。
写真集です。
「辺境・近境」を気に入ったのなら合わせて読みたいですね。頭の中のイメージがより具体的に浮かび上がってきます。
ふわふわ(1998年6月)
ぼくは世界じゅうのたいていの猫が好きだけれど、この地上に生きているあらゆる種類の猫たちのなかで、年老いたおおきな雌猫がいちばん好きだ。――ふわふわとした、みごとに美しい毛をもつ猫が教えてくれる、いのちあるものにとってひとしく大事なこととは?あなたのなつかしく温かい記憶がよみがえる。
絵本です。
絵本ですが、完全に子ども向けというわけではなく、中高生、なんなら大人向けかなと思いました。
CD-ROM版村上朝日堂 夢のサーフシティー(1998年7月)
ファンとのメールのやり取りなど、積極的に読者とのコミュニケーションを取ろうとしてきたことがわかる一冊です。
この後にファンとの交流本は何冊も出されることになりました。
残念なのはCD-ROMの規格が古く、現代のパソコンでは読み取れない場合がほとんどなこと。僕もダイジェスト版的な書籍のほうしか読んだことがありません。
約束された場所で―underground 2(1998年11月)
癒しを求めた彼らはなぜ無差別殺人に行着いたのか?オウム信者へのインタビューと河合隼雄氏との対話によって現代の闇に迫る。
地下鉄サリン事件の被害者にインタビューを行った『アンダーグラウンド』の続編です。
今作ではオウム真理教の元信者にインタビューを行っています。
僕は彼らに対して、洗脳とか催眠とかのイメージを持っていました。ですが、インタビューに応える元信者たちは、冷静で頭の良い人物に見えます。
スプートニクの恋人(1999年4月)
22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。――そんなとても奇妙な、この世のものとは思えないラブ・ストーリー!!
「ねじまき鳥クロニクル」や「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」のような不思議な世界観がまったくない作品です。
「村上春樹らしくない」作品だと言えるかもしれません。「ノルウェイの森」や「国境の南、太陽の西」が好きな方向けだと思います。
もし僕らのことばがウィスキーであったなら(1999年12月)
シングル・モルトを味わうべく訪れたアイラ島。そこで授けられた「アイラ的哲学」とは? 『ユリシーズ』のごとく、奥が深いアイルランドのパブで、老人はどのようにしてタラモア・デューを飲んでいたのか? 蒸溜所をたずね、パブをはしごする。飲む、また飲む。二大聖地で出会った忘れがたきウィスキー、そして、たしかな誇りと喜びをもって生きる人々――。芳醇かつ静謐なエッセイ。
スコットランドやアイルランドのお酒について書かれた本です。
実際に醸造所へも足を運んでいます。僕は普段まったくお酒を飲まないんですが、思わずスコッチを飲みたくなります。
神の子どもたちはみな踊る(2000年2月)
1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる……。大地は裂けた。神は、いないのかもしれない。でも、おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた――。深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。
少し不思議な雰囲気のする短編集です。
ファンタジー風というか、現実離れしているというか。好みの分かれる作品だと思います。僕はちょっと苦手でした。
またたび浴びたタマ(2000年8月)
「そうよ、私、したわよ……嘘」〈あ〉から〈わ〉まで、回文かるた集。ミニエッセイとカラーイラスト付き。ちょっとヘンな村上ワールドです。
友沢ミミヨさんのイラストに、回文とショートショートが付された作品です。
読んでいてほんわかさせられます。
「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?(2000年8月)
限定公開された村上朝日堂ホームページに寄せられた読者からのメールに応えた一冊です。
真剣なものもあればふざけたものもあり、涙あり笑いあり…質問と回答を一個ずつ読んでいっても楽しめますし、つまんで読んでもおもしろいです。
翻訳夜話(2000年10月)
なぜ翻訳を愛するのか、若い読者にむけて、村上・柴田両氏が思いの全てを語り明かす。村上訳オースター、柴田訳カーヴァーも併録。
柴田元幸さんとの共著。
著者二人と学生や翻訳者たちとのセッションの様子が収録されているほか、レイモンド・カーヴァーとポ―ル・オースターの作品を翻訳し比較が行われます。
1000円を切る値段で、二人の競訳と原文を読むことができるため、めちゃくちゃお得な本です。
村上春樹に興味がなくても英語翻訳に興味がある方は読んでみると楽しめると思います。もちろん文章の意味は同じですが、ニュアンスの違いがおもしろいです。
シドニー!(2001年1月)
2000年、シドニーの23日間。初めてのダウンアンダー(南半球)、アスリートたちとともに〈走る作家〉は何を見、どう語るか?
タイトルの通り、シドニーオリンピックを取材した一冊です。
シドニーの歴史や街中の情報もあり、シドニーに行く前や、オリンピックの始まる前に読まれると一層楽しめると思います。
ポートレイト・イン・ジャズ2(2001年4月)
和田誠が26人のジャズメンの肖像画を描き、そこに村上春樹がエッセイをつけた。同じ体裁で作られた前作『ポートレイト・イン・ジャズ』の続編。
前作『ポートレイト・イン・ジャズ』の続編です。
やっぱりジャズについて知らないと厳しいかも。
CD-ROM版村上朝日堂 スメルジャコフ対織田信長家臣団 (2001年4月)
読者とのメールでのやり取りなどがまとめられた一冊。
とくに安西水丸さんとの対談が素晴らしいんですが、いまからだとその対談が収録されているCD-ROMを再生できる環境のある方がどれだけいるか…
村上ラヂオ(2001年6月)
公園のベンチで食べる熱々のコロッケパン。冬のゴルフコースをスキーで走る楽しさ——。オーバーの中に子犬を抱いているような、ほのぼのとした気持ちで毎日をすごしたいあなたに、ちょっと変わった50のエッセイを贈ります。柿ピーの諸問題、楽しいレストランでの大惨事(?)から、きんぴら作りに最適なBGM、そして理想的な体重計の考察まで、小さなドラマが一杯!
エッセイ集で、気軽に読めます。
村上朝日堂シリーズは昭和の世相を反映したものや時事ネタもあるため、いまからエッセイを読むのならおすすめはこれかなと思っています。
海辺のカフカ(2002年9月)
「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。
久々の長編小説は15歳の少年を主人公に据えた、少し異なるテイストのものになりました。
村上春樹らしい不思議な物語が展開されていきます。リアル目な小説のおすすめが「ノルウェイの森」なら、不思議な小説のおすすめが「海辺のカフカ」です。
少年カフカ(2003年6月)
『海辺のカフカ』の読者から著者のもとへ、ネット上で多数の質問、感想が寄せられた。13歳、15歳の少年少女から70歳の読者まで。日本の各地から、韓国、イタリア、カナダまで。トライアスリート、郵便局員からスチュワーデス、中日ファン、ヤクルトファンまで――。小説論から進路相談、そしてプロポーズの指南まで、さまざまな読者のさまざまな意見、疑問へ村上春樹が答えた怒涛のメール1200通!
海辺のカフカと同時期に開設していたホームページから寄せられた質問に答えたものです。
読者とのやりとりをまとめた本は複数出されていますが一番おすすめです。ですが、大判で持ち運びしにくいのは難点。その点では文庫化もされている「村上さんのところ」のほうがいいかもしれません。
翻訳夜話2 サリンジャー戦記(2003年7月)
サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の新訳を果たした村上春樹が翻訳仲間の柴田元幸と、その魅力・謎・真実の全てを語り明す。
翻訳の中でも、とくに『キャッチャー・イン・ザ・ライ』について書かれた本です。そのためサリンジャーを先に読まないと、読む意味はないと思います。
日本ではすでに、野崎孝の 『ライ麦畑でつかまえて』という優れた翻訳があり、村上春樹の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』は賛否両論を巻き起こしました。
野崎訳の『ライ麦畑でつかまえて』のほうが好きな方には受け付けられない本かもしれません。
アフターダーク(2004年9月)
時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。フード付きパーカにブルージーンズという姿の彼女のもとに、ひとりの男性が近づいて声をかける。そして、同じ時刻、ある視線が、もう1人の若い女性をとらえる――。新しい小説世界に向かう、村上春樹の長編。
文体や、視点などかなり実験的な意欲作になっています。
個人的には良さが分からない作品でした。
東京するめクラブ 地球のはぐれ方(2004年11月)
名古屋、熱海、ホノルル、江ノ島、サハリン、清里……「ちょっと」変なところをするめクラブが大発見! 驚天動地のファンキー・トラベル。
名古屋や熱海、ハワイなど各地のルポをまとめた本です。
とくに食べ物の描写がとても美味しそうです。
ふしぎな図書館(2005年1月)
図書館で「オスマントルコ帝国の税金のあつめ方について知りたいんです」とたずねたぼくに、老人の目がきらりと光った。案内された地下の閲覧室。階段をおりた奥から、羊男が現れて……。はたしてぼくは、図書館から脱出できるのか? 村上春樹と佐々木マキが贈る、魅力溢れる大人のためのファンタジー。
図書館に閉じ込められた青年を描いた絵本です。
春樹ワールド全開なので、世界観が好きな方向けです。
象の消滅 短篇選集 1980-1991(2005年3月)
「村上春樹はまずなにを読めばいい?」「短篇をいくつか読みたい。」そんなあなたへ贈る、ニューヨーカーが選んだ村上春樹の初期短篇集。
アメリカで出版された短篇選集が日本に逆輸入されました。
初期短篇の傑作が集められていて、短篇集の中では一番おすすめです。
短篇を読みたいのなら、とりあえずこれから読めば間違いないです。
東京奇譚集(2005年9月)
肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却……。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。
不思議なイメージの短編集でまさに「奇譚」です。
個人的には不思議な世界観に乗り切れませんでした。
意味がなければスイングはない(2005年11月)
音楽は書物と同じくらい人生にとって重要なものという村上春樹が、シューベルトからスタン・ゲッツ、ブルース・スプリングスティーン、Jポップのスガシカオまで、すべての音楽シーンから選りすぐった十一人の名曲を、磨き抜かれた文章とあふれるばかりの愛情を持って語りつくした、初の本格的音楽エッセイ。
エッセイの中でも音楽について書かれています。
スガシカオなど現代のアーティストもいますが、あんまり馴染みがなかったです。
ラオスにいったい何があるというんですか?(2005年11月)
そこには特別な光があり、特別な風が吹いている――ボストンの小径とボールパーク、アイスランドの自然、「ノルウェイの森」を書いたギリシャの島、フィンランドの不思議なバー、ラオスの早朝の僧侶たち、ポートランドの美食やトスカナのワイン、そして熊本の町と人びと――旅の魅力を描き尽くす、村上春樹、待望の紀行文集。「熊本再訪」初収録。
紀行文集です。
タイトルにはラオスとありますが、ラオスだけではなく、アイスランド、ギリシャ、フィンランドなど世界各地を旅しています。
「遠い太鼓」でも書きましたが、やっぱり南ヨーロッパの描写や雰囲気が素晴らしいと思いました。
「これだけは、村上さんに言っておこう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける330の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?(2006年3月)
作家の村上春樹が開いていた「村上朝日堂ホームページ」に寄せられた読者との交換メールを新たに編集し、台湾、韓国の読者からの質問に答えた未発表回答も収録。実売14万部の『そうだ、村上さんに聞いてみよう』の続編で、今回は330の質問を掲載しました。悩める人生、恋の破局、作品論など、日本を代表する人気作家が、時に軽妙に、時に真摯に答え、意外な一面も明かします。絵は安西水丸の描き下ろし。
「村上朝日堂」の質疑応答コーナーを収録したムックの2冊目です。
前作と似たような感じで楽しめると思いますが、なかでも台湾や韓国など海外の視点もあることが特長です。
「ひとつ、村上さんでやってみるか」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける490の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?(2006年11月)
今春限定の「村上朝日堂ホームページ」に寄せられた著者と読者の応答490通を収録。フィッツジェラルドの『グレード・ギャツビー』(11月)やチャンドラー『ロング・グッドバイ』(来春)の新訳から全裸家事主婦まで過激にホットに全面回答しました。恋愛の法則、女の子の条件、健康の秘訣、物欲について、腹が立つことへの処理法、最近作『アフターダーク』『東京奇譚集』への質問など一挙大公開。
「村上朝日堂」の質疑応答コーナーを収録したムックの3冊目です。
メールのやり取りを収録しただけなんですが、それがこれだけおもしろいんだから、やっぱり村上春樹の文章って魅力的なんだなと思わされます。
はじめての文学 村上春樹(2006年12月)
小説の面白さ、楽しさを味わうために、著者自身が用意したスペシャル・アンソロジー。はじめてのひとも、春樹ファンも欠かせない1冊。
「はじめての文学」シリーズの一冊です。若い読者向けに選んだ短編が収録されています。
ルビが降ってあったりと読みやすくなっていますが、それを除けば『象の消滅 短篇選集 1980-1991』のほうがおすすめです。
村上かるた うさぎおいしーフランス人(2007年3月)
世界のハルキ・ムラカミの最新作。「飼い犬に手を握られた」など驚異の108篇。ミニエッセイ、カラーイラスト、4コマ漫画付きの痛快版。
ミニエッセイをまとめた一冊です。
とにかく肩の力を抜いて気楽に読めるので、さらっと文章に触れたいときにいいかもしれません。
走ることについて語るときに僕の語ること(2007年10月)
走ることについて語りつつ、小説家としてのありよう、創作の秘密、そして「彼自身」を初めて説き明かした画期的なメモワール 1982年秋、専業作家としての生活を開始したとき、彼は心を決めて路上を走り始めた。それ以来25年にわたって世界各地で、フル・マラソンや、100キロマラソンや、トライアスロン・レースを休むことなく走り続けてきた。旅行バッグの中にはいつもランニング・シューズがあった。走ることは彼自身の生き方をどのように変え、彼の書く小説をどのように変えてきたのだろう? 日々路上に流された汗は、何をもたらしてくれのか? 村上春樹が書き下ろす、走る小説家としての、そして小説を書くランナーとしての、必読のメモワール。
作家には体力が必要らしく、熱心に取り組まれているマラソンやトライアスロンについて書かれています。
最後まで歩くことなく走り続けたマラソンの描写など、元気を貰える本です。
中途半端な自己啓発本を読むくらいならこの本を手に取ってほしいです。
村上ソングズ(2007年12月)
ポピュラーなあの曲、知る人ぞ知るこんな曲。厖大なレコード・コレクションから村上さんが選び、歌詞を訳して紹介するジャズ、スタンダード、ロックの名曲。訳詞とエッセイに和田さんの絵も満載。
膨大なレコードのコレクションから、歌詞に注目した名曲選です。
やっぱりあんまり馴染みがないんですよね…
1Q84(2009年5月)
1Q84年――私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう、青豆はそう決めた。Qはquestion markのQだ。疑問を背負ったもの。彼女は歩きながら一人で肯いた。好もうが好むまいが、私は今この「1Q84年」に身を置いている。私の知っていた1984年はもうどこにも存在しない。……ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』に導かれ、主人公青豆と天吾の不思議な物語がはじまる。
オーウェルの「一九八四年」との関連も話題になった長編小説です。
天吾と青豆という2人のエピソードが交互に綴られていきます。長いんですがダラダラすることなく楽しめますし、筆が乗っているなと感じます。
終盤には不思議な感動が待っていて、読んで良かったなと思いました。
めくらやなぎと眠る女(2009年11月)
本邦初登場の「蟹」は、名作「野球場」に登場した作中小説を、実際の作品として書き上げた衝撃の掌篇!
ニューヨークで編集された英語版と同じ構成の自選短篇集。
「象の消滅」に続き、アメリカで出版された短篇集が逆輸入されたものです。
まず「象の消滅」を読み、気に入ったらこちらも…という流れがおすすめです。それだけ「象の消滅」に入っている短編が入門用に最適だと思います。
夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです(2010年9月)
世界の村上春樹が文学について世界について語り尽くす。
公の場に出ないという印象を与える村上春樹。一九九七年から二〇一一年までの十九本のインタビューで知る作家の素顔と思想
普段メディアにはほとんど出ない作者の貴重なインタビュー集です。
生活に関する回答だけではなく、創作論を語っているため貴重な本です。作家志望の方なら読んで損はないと思います。
ねむり(2010年11月)
短編小説「ねむり」にイラストレーションを加えて、さながら芸術作品ような豪華な本に仕上げられています。
美麗な本ですが、1980円は高価に感じます。
村上春樹 雑文集(2011年1月)
デビュー小説『風の歌を聴け』新人賞受賞の言葉、伝説のエルサレム賞スピーチ「壁と卵」(日本語全文)、人物論や小説論、心にしみる音楽や人生の話……多岐にわたる文章のすべてに著者書下ろしの序文を付したファン必読の69編! お蔵入りの超短編小説や結婚式のメッセージはじめ、未収録・未発表の文章が満載。素顔の村上春樹を語る安西水丸・和田誠の愉しい「解説対談」付。
『風の歌を聴け』の新人賞受賞の言葉やエルサレム賞スピーチ「壁と卵」など、これまで本に収録されていなかったものをまとめた一冊です。
入門向けというよりはコアなファン向けの本でしょう。僕はおもしろく感じましたが、いきなりこれを読んでも「ふーん」となってしまうのではないかと思います。
おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2(2011年7月)
なぜ、アボカドはむずかしい? 究極のジョギング・コースってどこだろう。アザラシのくちづけの味、ギリシャの幽霊、ロシアと日本のかぶをめぐる昔話の違い……etc。小説家の抽斗(ひきだし)から飛び出す愉しいエピソードの数々。長編小説『1Q84』刊行後、雑誌「アンアン」に連載された人気エッセイ・シリーズ52編を収録する。『おおきなかぶ、むずかしいアボカド――村上ラヂオ2』改題。
村上ラヂオ第2弾。
力の抜けたエッセイを気軽に楽しめます。
小澤征爾さんと、音楽について話をする(2011年11月)
「良き音楽」は愛と同じように、いくらたくさんあっても、多すぎるということはない――。グレン・グールド、バーンスタイン、カラヤンなど小澤征爾が巨匠たちと過ごした歳月、ベートーヴェン、ブラームス、マーラーの音楽……。マエストロと小説家はともにレコードを聴き、深い共感の中で、対話を続けた。心の響きと創造の魂に触れる一年間にわたったロング・インタビュー。
村上春樹=ジャズやロックのイメージがありましたが、本書ではクラシックについて言葉を交わしています。
僕はクラシックについても詳しくはないため、門外漢の印象を受けました。
サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3(2012年7月)
日々の暮らしの中で体験した愉快な話から、人生の深淵に触れる不思議なエピソードまで、小説家の頭の中の抽斗には、まだまだ話題がいっぱい! 「どうして寝る前に限ってネタを思いつくんでしょうね?」と悩みつつ、つぎつぎ繰り出されるユーモア溢れるエッセイ52編。大橋歩さんのおしゃれな銅版画も楽しい人気エッセイ・シリーズ第3弾。『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3』改題。
村上ラヂオ第3弾です。
3作も出るとなるとちょっと書き方を変えてくる作家さんもいますが、村上春樹は同じ雰囲気のまま届けてくれます。それが嬉しいんですよね。
パン屋を襲う(2013年2月)
人気の高い「パン屋襲撃」「パン屋再襲撃」が、ドイツ人のイラストレーターの力を借りて豪華な装幀本にまとめられました。
「ねむり」のような本ですが、やはりちょっと高いかなと思います。熱心なファンの方向けに。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(2013年4月)
多崎つくる、鉄道の駅をつくるのが仕事。名古屋での高校時代、四人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、四人から絶縁を申し渡された。
何の理由も告げられずに――。
死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時なにが起きたのか探り始めるのだった。全米第一位にも輝いたベストセラー!
主人公の、頼りなく安定感のない雰囲気がいかにも村上春樹作品という印象でした。
主人公は立派な大人ですが、過去の経験からか、どっしりと落ち着いた雰囲気は持ち合わせていません。
僕もこういう一面を持っていますから苦笑いしながら読みましたが、似ているからかどうしても好きには慣れませんでした。
系譜としては「国境の南、太陽の西」や「ノルウェイの森」の延長線上にある作品だとは思います。
女のいない男たち(2014年4月)
〈これらを書いている間、僕はビートルズ「サージェント・ペパーズ」やビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」のことを緩く念頭に置いていた。
と、著者が「まえがき」で記すように、これは緊密に組み立てられ、それぞれの作品同士が響きあう短編小説集である。「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」の6編はそれぞれくっきりとしたストーリー・ラインを持ちながら、その筆致は人間存在の微細な機微に触れる。
現代最高の作家がいまできること、したいこと、するべきことを完璧な形で成し遂げた作品集と言えるだろう。
「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」他全6篇。最高度に結晶化しためくるめく短篇集。
短編集です。
雰囲気としては「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」と同じものを感じました。
年齢は重ねているけれど、精神的には成熟していない登場人物に好みが分かれそうです。
図書館奇譚(2014年11月)
僕と羊男はここから脱出できるのか? 図書館の地下に囚われる不条理を描く名作とカット・メンシックのダークなイラストが響きあう。
「ねむり」「パン屋を襲う」に続くビジュアルブックの第3弾です。
挿絵によって作品の不気味なイメージは増幅されているかもしれません。
村上さんのところ(2015年7月)
春樹さん、こんなことも聞いていいですか? 世界中から集まった質問は何と 3 万7465通。恋愛・人間関係・仕事など悩ましい人生のモンダイから小説の書き方、音楽や映画、社会問題、猫やスワローズまで、怒濤のメール問答は119日間、閲覧数1億PVに及んだ。可愛くてちょっとシュールなフジモトマサルのイラストマンガを多数加え、笑って泣いて励まされる選りすぐりの473通を収録する!
ファンとのメールのやり取りをまとめたシリーズの一冊です。
鞄の中に入れてちょっとした待ち時間に読むと楽しめると思います。一気に読んでしまうのではなく、ちびりちびりと楽しんでほしいです。
職業としての小説家(2015年9月)
いま、村上春樹が語り始める――小説家は寛容な人種なのか……。村上さんは小説家になった頃を振り返り、文学賞について、オリジナリティーについて深く考えます。さて、何を書けばいいのか? どんな人物を登場させようか? 誰のために書くのか? と問いかけ、時間を味方につけて長編小説を書くこと、小説とはどこまでも個人的でフィジカルな営みなのだと具体的に語ります。小説が翻訳され、海外へ出て行って新しいフロンティアを切り拓いた体験、学校について思うこと、故・河合隼雄先生との出会いや物語論など、この本には小説家村上春樹の生きる姿勢、アイデンティティーの在り処がすべて刻印されています。生き生きと、真摯に誠実に――。
小説家として仕事への向き合い方から、創作論、デビュー前後についてまで幅広く語っています。
作家志望の方ならなにかしらの影響やインスピレーションを得ることができるでしょう。
騎士団長殺し(2017年2月)
一枚の絵が、秘密の扉を開ける……妻と別離し、傷心のまま、海を望む小暗い森の山荘に暮らす孤独な36歳の画家。ある日、緑濃い谷の向こうから謎めいた銀髪の隣人が現れ、主人公に奇妙な事が起き始める。雑木林の古い石室、不思議な鈴、屋根裏に棲むみみずく、そして「騎士団長」――ユーモアとメタファーに満ちた最高の長編小説!
この記事を書いている時点での最新長編ですね。
なんというか…評価の難しい本だなと感じました。すごい傑作な気もしますし、凡作な気もします。
冒頭から春樹ワールド全開で読者はあちらこちらに振り回されます。それで、どこかに辿り着けたかと聞かれても、はっきりとはわからないのです。
村上春樹 翻訳 (ほとんど) 全仕事(2017年3月)
その原動力はどこからくるのか ―― 翻訳者・村上春樹が、 70余点の訳書と、36年にわたる道程を振り返る。 訳書、原書の写真多数。 柴田元幸氏との対談もたっぷり収録。
翻訳の舞台裏を明かしつつ、柴田元幸さんとの対談を行っています。
翻訳については他の著作に書かれていることもありますが、両者のファンとしては柴田元幸さんとの対談を読めただけで満足な一冊でした。
みみずくは黄昏に飛びたつ(2017年4月)
ようこそ、村上さんの井戸へ── 川上未映子はそう語り始める。少年期の記憶、意識と無意識、「地下二階」に降りること、フェミニズム、世界的名声、比喩や文体、日々の創作の秘密、そして死後のこと……。初期エッセイから最新長編まで、すべての作品と資料を精読し、「村上春樹」の最深部に鋭く迫る。十代から村上文学の愛読者だった作家の計13時間に及ぶ、比類なき超ロングインタビュー!
川上未映子さんとの対談本です。『騎士団長殺し』の直後に刊行されたこともあり、誕生秘話も明かされています。
注目ポイントとしてはフェミニズムの観点でしょう。村上春樹はたびたびフェミニズムの観点から、とくに女性の評論家に敵視されていると言ってもいいくらい非難の声を浴びせられています。
かたや川上未映子は、いまやフェミニズムの観点からの発言を求められ続ける作家になったと言ってもいいくらい、「フェミニズム」「女性」「女性的」な事柄についてオピニオンを発信し続けています。
喧嘩別れに終わっても不思議ではない組み合わせですが、川上未映子が熱心な村上春樹ファンとのことで穏やかに対談は進んでいきます。
もう少しツッコんでほしい気持ちはありつつ、若くして頭角を現した二人の作家の対談は読みごたえがあります。
本当の翻訳の話をしよう(2019年5月)
村上春樹と柴田元幸の対談集、ついに刊行決定。
文芸誌『MONKEY』を主な舞台に重ねられた、小説と翻訳をめぐる対話が一冊に。
柴田元幸さんとの対談集です。
まずはこの本からではなく、翻訳夜話から読んでほしいです。過去何冊も出されているお二人の本なだけに、やや話がダブる箇所もあったように思います。
一人称単数(2020年7月)
「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。そして、そう、あなたはもうあなたでなくなっていく。そこで何が起こり、何が起こらなかったのか? 「一人称単数」の世界にようこそ。
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