誘拐ラプソディー(荻原浩)のあらすじ・感想(ネタバレなし)「憎めないダメ男のドタバタ誘拐劇」

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誘拐ラプソディーの作品情報

タイトル
誘拐ラプソディー
著者
荻原浩
形式
小説
ジャンル
エンターテインメント
サスペンス
執筆国
日本
版元
双葉社
初出
不明
刊行情報
双葉文庫

誘拐ラプソディーのあらすじ(ネタバレなし)

伊達秀吉は、金ない家ない女いない、あるのは借金と前科だけのダメ人間。金持ちのガキ・伝助との出会いを「人生一発逆転のチャンス?」とばかりに張り切ったものの、誘拐に成功はなし。警察はおろか、ヤクザやチャイニーズマフィアにまで追われる羽目に。しかも伝助との間に友情まで芽生えてしまう-。はたして、史上最低の誘拐犯・秀吉に明日はあるのか?たっぷり笑えてしみじみ泣ける、最高にキュートな誘拐物語。

作者

荻原 浩 おぎわら・ひろし(1956年6月30日 – )

小説家。埼玉県大宮市出身。成城大学経済学部卒業。大学卒業後、広告代理店やコピーライターとして活躍。39歳のときに小説を書き始め、1997年にその小説『オロロ畑でつかまえて』で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2004年に発表された『明日の記憶』が本屋大賞第2位にランクイン。さらに山本周五郎賞を受賞し渡辺謙主演で映画化されるなどヒット作となる。

誘拐ラプソディーの刊行情報

映画『誘拐ラプソディー

映画『誘拐ラプソディー』2010年4月3日

監督:榊英雄、出演:高橋克典、林遼威、小野寺慶之、小野寺文哉、YOU、哀川翔、船越英一郎

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誘拐ラプソディーの登場人物

伊達秀吉
38歳。金なし、家なし、仕事なし。あるのは借金と前科だけ。とことん運に見放された男。生きることに嫌気が差し、ついに死を決意していたが、目の前に現れた伝助を連れ去り、一発逆転を目論む。

篠宮伝助
6歳。裕福な家に生まれる。

誘拐ラプソディーの感想・解説(ネタバレあり)

憎めないダメ男とちょっとバカで生意気な子どものドタバタ誘拐劇

借金地獄から逃げるために、会社の社長を襲いお金と車を奪った主人公・伊達秀吉。しかしその所持金も底を尽き、行く場所もなくなり、自殺しようかと考え始めたところに金持ちの子ども・伝助が現れます。秀吉は、その子を誘拐して身代金を手に入れることを思いつき、ユーモアに溢れた誘拐劇がスタートしたのでした。

進学や、就職、クラス替えの際など、周りが知らない人や今まで話しかけたことがなかった人だったりすると、妙に意識してしまい上手く話せないということがよくあります。なにも知らない人と話すのが難しいのもあります。それでも仲良くなりたいという願望から話しかけるわけです。でも意外と最初に会話が弾まなかった人と仲良くなったりすることがあります。

本作でも一つの友情が成り立ちます。まずは伊達秀吉。父親から「日本を獲るような大きな男になれ」と言う理由だけで大層な名前を付けられた彼ですが、実際は38にもなって、妻なし、家なし、金なしというダメダメな人物です。

もう一人は、篠宮伝助という小学校の入学式を目前に控えた6歳の少年です。秀吉とは対照的に、コンビニの弁当を食べたことがなく、スペイン語を習わせられているという裕福な少年です。秀吉は誘拐をたくらみ、伝助は家出をもくろみ、そんな二人はお互いの思慮を知る由もなく、行き先のない小旅行さながらに行動することになります。

そんな秀吉にとって災難なのが、伝助の父親が指定暴力団の組長であったことです。まったく危機感の感じられない2人の逃亡行では、意識しても強面の組員、その中にいるらしい裏切り者、はてはチャイニーズ・マフィアや警察までも絡み複雑な様相を呈してきます。

逃亡を続ける中で秀吉と伝助の間には妙な連帯感が生まれてきます。「共犯者」と呼べるような関係に友情が芽生えたのは、2人が多くの時間を共に過ごしたからでしょう。作中で経過したのはわずか3日間だけですが、濃密な時間が展開されていきます。

序盤の面白おかしい描写が、次第にもの悲しげな様子に何の抵抗もなく変化して行くところに、読者は感心させられます。ドタバタコメディなのに、最後には思わず目頭が熱くなる展開もあり、読んでいて楽しい小説です。

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