となり町戦争(三崎亜記)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

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となり町戦争(三崎亜記)の作品情報

タイトル
となり町戦争
著者
三崎亜記
形式
小説
ジャンル
戦争
執筆国
日本
版元
集英社
初出
不明
刊行情報
集英社文庫
受賞歴
第17回小説すばる新人賞
第133回直木三十五賞候補

となり町戦争(三崎亜記)のあらすじ(ネタバレなし)

ある日、突然にとなり町との戦争がはじまった。だが、銃声も聞こえず、目に見える流血もなく、人々は平穏な日常を送っていた。それでも、町の広報紙に発表される戦死者数は静かに増え続ける。そんな戦争に現実感を抱けずにいた「僕」に、町役場から一通の任命書が届いた…。見えない戦争を描き、第17回小説すばる新人賞を受賞した傑作。文庫版だけの特別書き下ろしサイドストーリーを収録。

作者

三崎 亜記 みさき・あき(1970年8月 – )

小説家。熊本大学文学部史学科卒業。1998年、パソコンを買ったことをきっかけに、市役所職員のかたわら「となり町戦争」の執筆を始め、同作で第17回小説すばる新人賞受賞しデビュー。

となり町戦争(三崎亜記)の刊行情報

映画版

映画『となり町戦争』角川映画、2007年2月3日

監督:渡辺謙作、出演:江口洋介、原田知世、瑛太、余貴美子

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となり町戦争(三崎亜記)の登場人物

北原 修路(きたはら しゅうじ)
舞坂町のアパートに一人暮らし。職場までの通勤の関係で、町に住み始めた。

香西 瑞希(こうさい みずき)
舞坂町役場の職員。

となり町戦争(三崎亜記)の感想・解説・評価

“見えない”現代の戦争を描いた意欲作

本作は、戦争を公共事業として扱った意欲作である。主人公は、ある日役所の広報で開戦を知る。そして、戦争に参加することになる。とはいえ、銃火器を使用した実戦に参加するというわけではない。偵察業務を行うのみである。

本作で行われる戦争では数百人もの戦死者を出しているらしいのだが、実戦が描かれないため、実情を知ることはできない。実戦を描かず、広報でその状況を知らせるだけというやり方は、偵察員である主人公の視点からすれば非常に現実的だ。戦死したという人たちは紙の上の数字でしかないような錯覚を覚えてしまう。

現実の戦争を描いたのか?

本作では、一つの矛盾が描かれている。戦争=戦うこと=悪としている社会。そんな社会がつくった映画や物語の中で「正義」は武力を持って相手を倒しているということだ。

作者は本作を通して日本社会に警鐘を鳴らしたかったのかもしれない。本作における戦争が、侵攻戦争か、防衛だったのかは分からない。しかしそのどちらにしても、市民はただ一方的にその事実のみを告げられ協力させられる。

作中ではあくまで公共事業としての扱いに留まっているため、協力は強制ではなく、任意によるものである。しかし実際はそんなことはいっていられない。

主人公は戦争に従事したのだろうか。本作のような設定でなくても、実際の戦場で戦う一兵士からすれば戦争の全容を知ることはとてもできないだろう。しかし肝心の日本の読者のほとんどは戦争を知らない。

直木賞の選評にて津本陽氏は「他の国では、戦争の現実が知られている。日本でのみ若者にうけいれられる物語か。」と評した。まさにそれこそが本作が賞賛された一因になってしまっている気がしてならない。

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