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1月20日、記事作成公開。
1月19日、欅坂46公式ウェブサイトが更新され、8thシングル表題曲のタイトルが「黒い羊」になったことが発表された。7thシングル「アンビバレント」から半年が経ち、満を持して2月27日に発売される。
「黒い羊」で気になるのはやはりその特徴的なタイトルだろう。(白のイメージのある)「羊」と「黒」の組み合わせは相反するように感じられる言葉であり、その意味では「不協和音」「アンビバレント」的でもあるが、なにより欅坂46のシングル表題曲のタイトルに動物の名前と色が含まれたのは初めてのことだ。
色への注目
僕がまず初めに注目したのは「黒い」という色だった。それはhtmlの非表示タグまで使って「8」と表示された公式サイトの1ページが関係していた。
7thシングル発売ニュースに「アンビバレント」の文字が含まれていたことは後に話題になったが、8thシングルでもこの真っ暗な画面で「黒」を主張してくるとは思っていなかった。
この一件で僕の頭の中にまず入ってきたのは「黒い羊」ではなく「黒い」「羊」と分かれた言葉のイメージだった。それは「黒」と真逆の「白」の言葉が含まれた欅坂46の1stアルバム「真っ白なものは汚したくなる」の存在が大きかったことも影響している。「黒い」羊が存在するのならば、きっと周りの羊の白さを疎ましく思っていることだろう。それならばその羊が「真っ白なものは汚したくなる」と考えてもまったく不思議ではないと思ったのだ。
そのような思考から「黒い羊」→「月曜日の朝、スカートを切られた(真っ白なものは汚したくなる)」→「サイレントマジョリティ―」という関連性、ストーリーの繋がりも考えた。しかし、「黒い羊」という文字のフォントに注目したとき、別の可能性が浮かび上がってきた。
「黒い羊」に内包された欅の木と16、真っ二つになった「欅」
欅坂46は毎シングルごとに様々な文字表現・タイポグラフィを行ってきた。このタイポグラフィの詳細については「別冊カドカワ 総力特集欅坂46 20180918」に詳しいのでそちらを読んでいただければと思う。「黒い羊」で注目されるのは「羊」の文字の三画目がやたらと長くなっており、「4」と「羊」の文字で三角形が形成されている点だ。
黒の下の点の両側に線がなぞるようなデザインにもなっており、羊の一画目、二画目から線を伸ばすと小さな三角形ができるデザインになっている点も細かい。さらに「羊」の縦棒と三角形を組み合わせると、欅の木のような形になっているようにも見える。さらに4の横棒が欅の木に吸収され、「46」は「16」になってしまっている。これは紅白歌合戦でパフォーマンスを行った1期生メンバーの数と一緒だ。原田葵や平手友梨奈は8thに不参加なのかもと一瞬思ったのだが…
ただ、ここで一番気になるのは、この三角形が欅坂46の象徴でもある「欅」の一字を真っ二つにしている点だ。この三角形と縦棒が「欅の木」を表しているというのなら「欅坂」の二文字を「い」のように「欅の木」の中に入れたはずだ。このような詳細なデザインを行った人が真っ二つの欅に気が付かないはずはないし、そのぐらいのデザイン変更は簡単にできるだろう。
この真っ二つの「欅」の字からは不穏な印象を受ける。たしかに「欅坂46のアンダーグループとして」募集されたけやき坂46が事実上別グループとして活動し始めたため、欅坂46は真っ二つになっているといえばなっている。しかしそれは温厚的な別離とでもいうものであり、「欅」の文字を割るという過激な表現に訴えるほどのものではないだろう。ついに2018年に初めての卒業者の出た欅坂46内でなんらかの「不協和音」があったのかもしれないが、それは一ファンである僕の知るところではない。
ただ欅の木の三角形の中に「欅」の中の「手」だけが入っていることは偶然ではなく、デザイナーの意図が隠されているように思える。平手友梨奈は2017年から体調不良→怪我→映画へ専念→怪我と、学業もある中で満足な活動を送ることはできなかったかもしれないが、卒業することなく欅坂46のメンバーとして在籍し続けているからだ。それだけで8thシングルのセンターに平手友梨奈を予想するのは少々乱暴かもしれないが…
「黒い羊」の言葉の意味に着目して
「黒い羊」という言葉を分解せずに理解しようとすると、そこには「のけ者・厄介者・見捨てられた者」という意味が含まれている。
また心理学や社会学の用語として「黒い羊効果」は「自分が所属する集団(内集団)とそれ以外の集団(外集団)における成員を評価する際に、内集団の優秀な成員は特に高く評価され、逆に内集団の劣った成員は特に低く評価される」という傾向のことである。つまり、グループの中で優秀な人は一層高く評価され、なんらかを苦手とする人は実際よりさらに低く評価されてしまうということだ。
乃木坂46を例に出せば生田絵梨花のピアノはとても評価されるが、秋元真夏の頭の大きさは大げさに言われてしまうということがあるだろうか。
欅坂46の中で「内集団の優秀な成員は特に高く評価され」に当てはまるのは、これまで7作連続でセンターを務めてきた平手友梨奈だろう。平手友梨奈には非凡なものがあると感じるし、実際僕も平手友梨奈のパフォーマンスがきっかけで欅坂46のことが好きになった。だが、当人は「なぜ自分がこれほどすごいと言われるのか」と意外そうですらある。
しかし、「逆に内集団の劣った成員は特に低く評価される」というのは誰のことだろう?尾関梨香の走り方、渡辺梨加のトークスキルなどそれぞれ苦手分野はあるだろうが、「劣った成員」というほどのメンバーはいないように感じる。だがそれはファンである僕の印象でしかない。紅白歌合戦の裏側でセンターを務めた小林由依が「私はすごく劣っている部分がたくさんあるから」とメンバーに向かって話をしながら涙を流していたように、メンバーにはメンバーごとの劣等感が存在するのだろう。
「僕は嫌だ」「I am eccentric 変わり者でいい」から2年
「黒い羊」の意味に一番近い楽曲で思いつくのは「I am eccentric 変わり者でいい」と歌った「エキセントリック」や「調和だけじゃ危険だ」と歌った「不協和音」だろうか。「誰かと違うことに何をためらうのだろう」と歌った「サイレントマジョリティ―」も含まれるかもしれない。ただ、それらの楽曲は「変わり者」を励ます歌であったり、孤立する(孤独な)一個人へのエールが含まれていた。
前述したように、今回の「黒い羊」には「のけ者・厄介者・見捨てられた者」という意味が含まれている。それらの言葉から感じる印象は「変わり者」のそれよりはるかに疎外的であり、排除的なものだ。(「黒い羊」には変わり者という意味も含まれうるが、言葉のニュアンスや表現の強さは上だろう)
8thシングル表題曲である「黒い羊」について、菅井友香と小池美波は「胸が締め付けられる感じ」「メッセージ性の強い」という共通した印象を語った。「結構メンバーみんなもこの曲に出会って変わったって子もいました」というようにメンバーへの影響も大きい。
そんな「欅らしいというか。欅だからできるのかなって思う曲」である「黒い羊」は「エキセントリック」や「不協和音」のように強い楽曲になるのかもしれない。そのときには(勝手にセンターだと予想した)平手友梨奈が孤独感を感じてしまわないように、他のメンバーが上手くサポートしてほしいものだ。平手友梨奈の不在により多数のメンバーがセンターを経験した今の欅坂46ならきっと可能だろう。