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吉行淳之介 よしゆき・じゅんのすけ(1924年4月13日 – 1994年7月26日)
小説家。岡山県岡山市生まれ、東京育ち。父は詩人の吉行エイスケ。麻布中学、旧制静岡高校(現・静岡大学)を経て、東京帝国大学に入学。しかし、授業にはあまり出席せず(のちに除籍)、新太陽社にて編集者として勤務。多忙の傍ら同人誌に作品を発表する。1952年『原色の街』が芥川賞候補となり、続けて『谷間』『ある脱出』と候補となる。肺結核を療養中の1954年、『驟雨』で第31回芥川賞を受賞。受賞を機に作家生活に入った。『暗室』で谷崎潤一郎賞、『鞄の中身』で読売文学賞を受賞。
おすすめ作品ランキング
長い記事なので、先におすすめランキングを紹介します!
- 1位:原色の街・驟雨
- 2位:暗室
- 3位:夕暮まで
作品年表リスト
※小説作品のみ紹介しています。
『驟雨』1954年10月『原色の街』1956年1月
見知らぬ女がやすやすと体を開く奇怪な街。空襲で両親を失いこの街に流れついた女学校出の娼婦あけみと汽船会社の社員元木との交わりをとおし、肉体という確かなものと精神という不確かなものとの相関をさぐった「原色の街」。散文としての処女作「薔薇販売人」、芥川賞受賞の「驟雨」など全5編。性を通じて、人間の生を追究した吉行文学の出発点をつぶさにつたえる初期傑作集。
初期の作品を集めた短編集。
芥川賞を受賞した「驟雨」も収録されており、「吉行淳之介の小説を読んだことはないけど気になっている」という方にまずおすすめです。
『星の降る夜の物語』1954年11月
『漂う部屋』1955年11月
『悪い夏』1956年11月『花束』1963年
短篇小説でたどる吉行淳之介の性愛の世界。少年の眼を通して若い男女の心の動きを追う「悪い夏」、若い頃想いを寄せた女と一緒に親友の十三回忌に出向く「花束」等、初期から最晩年迄の十四作品を精選する。
『焔の中』1956年12月
青春=戦時下だった吉行の半自伝的小説
昭和19年8月――、僕に召集令状が届いた。その後の入営は意外な顛末を迎えるが、戦時下という抑圧された時代、生と死が表裏一体となった不安を内包し、鬱屈した日々を重ねていく。まさしく「焔の中」の青春であった。
狂おしいほどの閉塞感の中にあっても、10代から20代の青年らしい友人との、他愛のない会話、性への欲望、反面、母への慕情など巧緻な筆致で描かれる。また、戦争とは一線を引いたかのような、主人公の透徹した眼差しと、確固たる自尊心は一貫しており、吉行自身のメンタリティが垣間見える、意欲作である。
『美女哄笑』1957年10月
『がらんどう』1957年
『男と女の子』1958年10月
吉行文学の真骨頂、繊細な男の心模様を描く
戦後の混沌とした時代、男は安定を求めて大会社のサラリーマンとなった。
だが、人員整理でクビとなり退職金を受け取った日、ヌードモデル志望の少女と出会う。丸顔に濃い化粧、大きな頭でアンバランスな躰の彼女にやがて愛憐の情が湧きはじめる――。
空虚感を纏いながらこの時代を生きていく男と雑誌編集者の友人との交流、戦禍に散った友人への回顧など、卓越した心理描写で綴られた珠玉の作。他に「水族館にて」「白い神経毬」「人形を焼く」の短編3作品を収録。
『二人の女』1959年3月
『娼婦の部屋』1959年4月『不意の出来事』1965年5月
男に翻弄され、ほかの職業についてもすぐに元の娼婦に戻ってきてしまう女に対する「私」の奇妙な執着を描いた『娼婦の部屋』。場末のキャバレーで働く女と、女のヒモで気の弱いヤクザ、三流週刊誌の記者である「私」との三角関係を淡々と描いた『不意の出来事』。ほかに『鳥獣虫魚』『寝台の舟』『風景の中の関係』など、初期の傑作短編13編を集めた作品集。新潮社文学賞受賞。
『すれすれ』1959年10月
石原沢吉は、父が遺した自家用車で白タクを始めた。「女の子とうまくやるためには車は必需品である」という話をしばしば耳にしたからである。ところが成果はおもわしくなかった。そんな時、沢吉は亡父の友人から、父が女体遍歴の秘伝書を遺していると聞いた!? 主人公の好色物語を通して、男女の生と性を描く異色の教養小説(ビルドゥングス・ロマン)。
『風景の中の関係』1960年5月
『街の底で』1961年4月
この作品は、贅肉を削ぎ落し、性と死と隣あった純粋であるが狭い極限状態の洞窟への指向と、粋人、通人的に遊びと風俗への奔放な指向とを、橋渡しする重要な作品である。
『闇の中の祝祭』1961年12月
奈々子と妻・草子。二人の女の間をボールのように舞う男――。モデル問題で騒がれた表題作のほか、同じ人物構成による、男にとっての女を描いた好短編「風呂焚く男」「青い花」「家屋について」の3話を収録。離婚時代(!?)の今こそ問う、男にとっての女とは……。吉行ファン必読の一冊!
『コールガール』1962年3月
『札幌夫人』1963年3月
『雨か日和か』1963年7月
『砂の上の植物群』1964年3月
中年の化粧品セールスマン伊木一郎が、偶然知り合った18歳の津上明子に求めるもの、明子に頼まれて誘惑する姉京子に求めるもの、そして妻の江美子に求めるものも、心ではなくただ女体であった。疚しさとも歪んだ心持ちとも無関係な、常識を破るショッキングな肉体の触れ合いの中に、真の性的充足を探り、性の根源にメスを入れた野心的長編。姉妹編を成す『樹々は緑か』を併録。
『女の決闘』1964年4月
『ずべ公天使』1964年5月
『にせドン・ファン』1964年5月
- 『ずべ公天使』所収
『痴・香水瓶』1964年5月
『夜の噂』1964年6月
年齢に似合わない異様な雰囲気を漂わす重役令嬢かおるに興味を惹かれた鬼多は、その友人銀子に親しみ、由加に近づいて、彼女の噂を収集する。しかし、噂の断片で形成されたかおるの姿は意外な実像に裏切られ、一方、日々接する銀子も次第に彼の知らない女に変貌しはじめる……。身近にあっても離れていても、遂にその虚像をしか掴めない男女関係の曖昧複雑な様相を描き出す長編小説。
『吉行淳之介短篇全集』1965年
- 全5巻
『技巧的生活』1965年7月
恋に酔う少女であった葉子は、酒場に勤めてゆみ子と名を変えた時から変貌しはじめた。男を商品として、あたかも無機物であるかのごとく見ようとする酒場の女たちの、言わば技巧的な生き方。――自分もそれに徹しようとするのだが、どうしてもロマンティックな感情を捨てきれない、ゆみ子の眼を通して、酒場の女たちのさまざまな生態、微妙な心理、孤独な姿を見事に活写した長編。
『唇と歯』1966年1月
『星と月は天の穴』1966年9月
結婚生活に失敗した独り暮しの作家矢添と画廊で知り合った女子大生紀子との奇妙な交渉。矢添の部屋の窓下に展がる小公園、揺れるブランコ。過去から軋み上る苦い思い出……。明晰・繊細な文体と鮮やかな心象風景で、一組の男女の次第に深まる愛の〈かたち〉を冷徹に描きあげ人間存在の根本を追究する芸術選奨受賞作。
『赤い歳月』1967年3月
単行本『赤い歳月』から2篇、『菓子祭』から13篇、さらに、文庫初収録の名篇『夢の車輪』から全12篇、計27篇の秀作集。現実と夢の壁を、あたかもなきがごとく自在に行きかい、男と女との「関係」などを、鋭く透写する硬質な作家の「眼」が、内から硬質の光を鋭く放つ! 『砂の上の植物群』、『暗室』、『鞄の中身』の達成の上に立つ、短篇の名手・吉行淳之介の、冴えわたる短篇群の「かがやき」。
『美少女』1967年4月
星と月の刺青をもつという混血の美少女・三津子が突然失踪した。彼女の行方を追う放送作家の城田祐一は、手掛りを求めて近づいた女たちの太腿に、何故かみな、同じ女王蜂の刺青があるのを見た。彼はこの不可解な刺青の謎を探りはじめるが……。都会的センスで洗練された軽妙洒脱な文体と、ミステリアスな手法で、複雑にもつれあう人間関係と、屈折した愛の心理を解きあかす長編。
『女の動物園』1968年6月
『暗室』1970年3月
屋根裏部屋に隠されて暮す兄妹、腹を上にして池の底に横たわる150匹のメダカ――脈絡なく繋げられた不気味な挿話から、作家中田と女たちとの危うい日常生活が鮮明に浮かび上る。性の様々な構図と官能の世界を描いて、性の本質を解剖し、深層の孤独を抽出した吉行文学の真骨頂。「暗い部屋」の扉の向こうに在るものは……。
『浅い夢』1970年6月
『小野小町』1970年6月
『吉行淳之介全集』1971–72年
- 全8巻
『裸の匂い』1971年12月
『湿った空乾いた空』1972年2月
可憐でやさしく、それでいて嫉妬深く自己中心的な女性M・Mと、ゼンソクの持病がある作家の「私」が、外国旅行をする。ラスベガスでの大喧嘩からはじまって、パリの空港で別れるまでの、一組の男女の繊細な感情の揺れ動きを吐露した表題作。他に、別居した妻と入籍を迫るM・Mとの間で、自己の“青春の復活”を凝視する「私」の緊張感を表白した『赤い歳月』を併録する。
『猫踏んじゃった』1973年8月
『一見猥本風』1973年10月
『出口・廃墟の眺め』1973年
『鞄の中身』1974年11月
自分の死体を鞄に詰めて持ち歩く男の話。びっしりついた茄子の実を、悉く穴に埋めてしまう女の話。得体の知れぬものを体の中に住みつかせた哀しく無気味な登場人物たち。その日常にひそむ不安・倦怠・死……「百メートルの樹木」「三人の警官」ほか初刊7篇を含め純度を高めて再編成する『鞄の中身』。読売文学賞受賞。
短篇19作品が収められた短編集です。300ページにも満たない薄い本なので、収録作品も短めのものが多いです。特に「蠅」などは4ページしかありません。
あらすじには「不安・倦怠・死」とありますが、個人的な印象としては「幻想・怪奇」のイメージです。「鞄の中身」は夢の話であることがあらかじめ断られ不条理なストーリーが展開されますし、「蠅」はグロテスクな怪奇もの。
日常の風景を舞台に背景を整えながら、一部に不気味な題材を用いての表現はいかにも文学的な小説だなと思わせられます。
『赤と紫』1974年
『吉行淳之介自選作品』1975年
- 全5巻
『子供の領分』1975年
少年と父と2人きりのはずだった旅。しかし、島へ渡る船で父の傍らに坐った若い女は…。「夏の休暇」ほか、少年の目に鮮やかに映し出された情景を描く9編。
『童謡』1975年
『怖ろしい場所』1976年1月
厄年の小説家・羽山圭一郎はこわい夢をよくみる。のっぺらぼうの女、眉の女、声の女、額の女、唇の女たちの様々な反応を想起する。現実世界では友人の女性秘書秋岡カオルと逢瀬をかさねるが、やがて別れてパリへ旅立つ。現実と回想と夢が微妙なリアリティーを醸し出す雰囲気の中に、中年男性の心理の襞を浮彫りにする。散らかしながら纏めていく技巧冴えわたる長編小説。
『牝ライオンと豹』1976年
『吉行淳之介エンタテインメント全集』1976–77年
- 全11巻
『寝台の舟』1977年
『鬱の一年』1978年
『夕暮まで』1978年9月
若い男女のパーティに、幾人かの中年男が招かれる。その一人佐々は会場で22歳の杉子をホテルへ誘う。処女だという彼女は、決して脚を開かせない代りに、オリーブオイルを滴らせた股間の交接、フェラチオ、クニリングスは少しも厭わない。こうして中年男と若い娘の奇妙な愛は展開していく。しかし事の結末は呆気なくおとずれる。人間の性の秘密を細密に描き上げた一幅の騙し絵(トロンプ・ルイ)。野間文芸賞受賞。
『菓子祭』1979年10月
単行本『赤い歳月』から2篇、『菓子祭』から13篇、さらに、文庫初収録の名篇『夢の車輪』から全12篇、計27篇の秀作集。現実と夢の壁を、あたかもなきがごとく自在に行きかい、男と女との「関係」などを、鋭く透写する硬質な作家の「眼」が、内から硬質の光を鋭く放つ! 『砂の上の植物群』、『暗室』、『鞄の中身』の達成の上に立つ、短篇の名手・吉行淳之介の、冴えわたる短篇群の「かがやき」。
『堀部安兵衛』1980年
『百の唇』1982年
『夢の車輪 パウル・クレーと十二の幻想』1983年11月
『吉行淳之介全集』1983–85年
- 全17巻 別巻3巻 講談社
『目玉』1989年9月
タクシー内にただよう異臭から思い出す数かずのニオイについて。妖怪にはじめて出会った子供の頃の避暑地の出来事。同じ避暑地で起こった鋸山心中事件から連想する「天国に結ぶ恋」坂田山心中。白内障手術と人工水晶体と埴谷雄高氏と。いのししの肉を送ってくるヤクザとの25年にわたる奇妙なつきあい…等々、鋭利な感性で研磨された過去の記憶が醸しだす、芳醇な吉行文学の世界。7篇収録。
『吉行淳之介全集』1997–98年
- 全15巻 、新潮社
『悩ましき土地』1999年
対象との距離を微妙にはかりながら、すれすれのところで作品として成立させる、吉行淳之介の短篇集。作者自身の幅を反映して、対象は読者から、バーの女給、エロ雑誌の編集者、棟梁、作者とおぼしき主人公の周辺に登場する諸人物は、いずれも一癖あるが、それを冷静に、ときには諷刺をまじえて、面白さをひきだす。表題作のほか、「青い映画の話」など12篇収録。
『吉行淳之介娼婦小説集成』2014年
赤線地帯の疲労が心と身体に降り積もり、街から抜け出せなくなる繊細な神経の女たち。「赤線の娼婦」を描いた全十篇に自作に関するエッセイを加えた決定版。